脳内で回想シーン流すな
今回の話でタイトルとつなげたいと思います!
自分の言語力のなさに思わず涙が・・・
目が覚めると夏だというのに涼しい風がそよそよと流れていった。まだ早朝だからか唸るような熱気はまだ影を潜めていたが、日が昇り時間が経てば嫌になるほどまとわりつく熱さが来ることであろう
夏用の薄い布団を除けて上半身だけを起こしたのは男性。つい先日、この武田家に引き取られたばかりの男だ。到着早々この家の人と一悶着、夜にはそこの娘の裸を見た始末である
そのことを思い出して微かに顔を赤らめ、くしゃくしゃと頭を掻いた
(・・・顔洗ってくっか)
借りている和室から出て左右を見る
(・・・しまったな。この家の地理情報がまったくない。しかもまだ朝っぱらじゃないか、こんなんで起こしちまっちゃぁ悪いような・・・?)
しばし立ち止まると、携帯での時間確認という口実により部屋に戻ろうとした。その時に突然声がかかった
「あれ?何してるの?」
そちらに首を動かすと、この武田家の娘である武田静香の姿があった。淡い青を基調とした薄手の寝間着を着ており、ご自慢のくせ毛が寝グセとともにくねくねしている。
「あ、いや・・・顔でも洗おうと思ってな。洗面所とかは?」
昨日のことを思い出し、少し口ごもってしまったが、なんとか言うことができた
だがそんな気遣いに気づかず、どころか昨日のことも忘れてるかのような口ぶりである
「あぁ~洗面所はね、この廊下の突き当たりを曲がってその後右に、そんでもってまっすぐ行った後に二つ目の廊下を左で・・・」
「待て、どんだけ広いんだこの家は」
あまりにも混乱しそうな案内を聞いて頭を痛ませながら止めた。顔を洗うのに一苦労である。
「でしょ~?だから私は洗面所では洗わないんだ」
その言葉に?を浮かべながら
「じゃあお前はどこで顔を・・・?」
そう言うと、ニコリと笑顔のまま手を引いた
ばしゃばしゃと心地よい水の音が武田家の裏庭に良く透った
「ん~~!きっもち良い~!」
水で濡れた顔を肩に下げていたタオルで拭いていく
「まさか井戸の水を使うとは・・・つーか井戸自体リアルで見るのは初めてだな・・・」
「なんと!?そんな人間がいるとは・・・考えられないね」
「都会人に喧嘩売りやがったな」
溜息とともに視線を井戸に向ける。少々、いや結構古びた器具だというのによくもまぁ今でも使えるものだ
「別に洗面所のでも良いけどさ」
言いながら拭き終わった(髪の先端にはまだ雫が残っているが)顔をこちらに向けて
「それじゃ普通でしょ?私は『それっぽい行動』がしたいからさ」
「・・・それだけか?つかなんだ、『それっぽい行動』って・・・・・・」
「な!それだけとは失礼な!『それっぽい行動』は私にとって欠かせない性質ですぞ!」
先ほどまで寝グセに巻き込まれて現れていなかったアホ毛がピンといきり立った
「・・・で?『それっぽい行動』ってのは?」
もう一度聞くと、フフンと自信にあふれた笑みと共に
「『それっぽい行動』というのはだね、アニメや漫画っぽい言動、行動、ポーズ、シツ、シチ・・・シ、シチュエーションとかのことだよ!」
ビシィと指差してきた。多分このポーズも『それっぽい行動』の一つであろう
(噛んだよこいつ・・・)
「へぇ・・・」
「な、なによ、その超興味ありませんわ~的な返事は!」
「へぇ、よくわかったな」
「うはぁッ!あんま嬉しくない!」
(元気な奴・・・)
そう思いながら先ほどの静香がやったように見よう見真似で井戸を使う。ちゃんと水は出た
「へぇ・・・大体の人は初見じゃ無理なのに・・・・・・」
水を出すだけなのにそこまで驚かれても困る。そう感じながらすくった水を顔にぶつける。気持ちよさと、濡れた部分に吹く風が心地よかった
「あ、タオル忘れたな・・・」
言いながら水に濡れて鬱陶しくなった髪をかきあげた
「フフフん、おっちょこちょいだなぁ」
「ブッ倒すぞ」
ニマニマしている静香に対し拳を握ると、ごめんごめんと笑いながら謝ってきた
「仕方ないから私のを貸しましょう」
そう言ってずいとタオルを突きつけてきた。
その行動に少し戸惑い、思考が一瞬遮断された。目の前の少女が突き出しているのは今目の前にいる少女が先ほど使っていたタオルである。
「なぁ、それ・・・」
「あぁ~良いの良いの!私は善人だからぁ~。人に喜んで欲しい人だから~」
のんびりとした口調と共にグイとまた突き出した。何が何でも使わせたいらしい
少し迷ったが、ここまで使えと言うのだから使うしかないのであろう。というかこれで気づいていないはずがない。そう考えると、タオルを受け取った
「しかしお前・・・よく自分が使ったのを人に渡せるな・・・俺には無理な行「あーー!!」
言いながらタオルを使い始めた時に叫びだした
「ちょ、ちょいタンマ!そ、それ私の!!」
先ほどと言っていることが矛盾している。使え使えから返せ返せに一変した
「お前が渡してきたんだろうが!」
「な、無し!なしなしなし!!」
そう言いながら目の前でぴょんぴょん跳ねる
「善意はどうした!喜んで欲しい人どこ行った!?」
取り返すべく手を伸ばし背伸びをしたりするが、まず身長差によって勝負はついていた
「ったく、めっちゃ打ち解けてんのかと思ったわ!昨日はあんなだったのに今日元気だなとか思ったけどよぉ!」
その言葉に昨日の夜のことを思い出し、顔を真っ赤に染め、目の焦点がずれてきた
「な!あ、や・・・う、うるさい!バカバカバカ!!」
それだけ言うと、踵をかえしダッシュで逃げた。が、途中で振り返り
「つ、償いは・・・してもらうかなね!」
まだ赤い顔に頑張って怒った感を出そうとしたからか、見る人が見れば、この場合青年だが、クリティカルをくらった
「償い・・・」
その言葉を口に出し、溜息と共にがっくりと肩を落とした
「と、いうわけでございます、涼香」
「いや、突然そんなこと言われてもわかんないから」
時は過ぎ、いつの間にか太陽は真上に浮かび、蒸し暑さがむわむわと押し寄せてきている。
そして武田家の静香の部屋には来客、友達の秋山涼香である。状況の再確認と今後について話すため来てもらった
「実はね・・・・・・・・・・・・・・・・・・と、いう事があってね?」
「わかるか。脳内で回想シーン流すな」
手に持ってたうちわでペチと叩くと、にゃ!と言って頭をさする
「二次元だとミンナ理解するよ?」
首をかしげつつ、なんで理解できないかなぁ?と本気で考える静香に
「アタシを漫画キャラにすんな。」
的確なツッコミがバシバシと決まる
「よし、まず状況整理だ。さっき見たあの男はどうしてこの家に来たの?」
その質問にむぅ・・・と数秒考え、はっ!と何かに気がつく
「今考えると・・・知らないや・・・」
ペチん!と涼香がまたうちわで叩いた。今回は続いて何回も
「いたい、いたい!地味に痛い!」
「黙れこのバカめ。うましかめ」
溜息をつくと、ちょうど良く静香の祖母、忍がお茶を持ってきてくれた。おぼんに氷入りのコップと麦茶のポットが乗っている
「いらっしゃい涼香ちゃん。あら?また可愛くなったんじゃないの?」
コップにお茶を入れながら涼香に話しかける
「おじゃましてますおばちゃん。ついで言うと、可愛くはなってないですよぉ~・・・」
自分で言って自分で落ち込んでれば世話ないものである。この間も静香はなんだと!誰がうましかだ!てゆーかうましかってなんだ!馬なのか鹿なのかはっきりしろ!とごちゃごちゃ言っている
「あ、おばちゃんなら知ってますよね?あの男の人、どうしてこの家に来たんですか?」
こういう時だけ目が輝く。小さい頃の涼香を知る忍にとっては全然変わっていないのだ
「あぁ、あの子はね・・・実はさ・・・」
神妙な顔つきになる忍を見て、涼香は息を飲み静香は黙った
「あの子の親、実は離婚したんだよ」
その場に衝撃が走った。昨日のこともあった静香にとっては、また冗談かなと考える余裕もあったが、実の祖母だからわかる。今回はマジだと
「普通はもう安定してくれると思ってたんだけどね。少し行き違いがあったみたいでさ。仲が悪くなりそのまま離婚。そこであの子をどうする?ってなった時に、あの二人ったらそこは息がピッタリでねぇ」
昔話をするような口調で語り始めていた忍に静香が言った
「何て・・・言ったの?」
「一人暮らしさせようってね、言いだしたの。まだ20歳になったばかりの大学に行ってた子を二人してほぼ見捨てたってわけ。それを聞いてわたしったら、怒っちゃってねぇ」
あまり良い話でもないのに笑いながら語るおばちゃんに疑問をもった
「それなら私が引き取るって言っちゃったの」
ウフフと笑う忍は、心の底から嬉しそうだった
「なんで、おばあちゃんはそんなに嬉しそうなの?」
とうとう聞いたその疑問に、忍は笑いながら
「私もあの子は好きだったからねぇ。小さい頃に何回か、数えるくらいだったけど会ったときの笑顔が可愛い子だったんだよ。静香さんみたいなね」
忍の言葉に照れて頬を掻いた静香
「だからさ、あの子は親に捨てられたもんなんだよ。だからイライラしてて昨日はあんな態度だったの。本当は優しい子だからさ、二人とも」
忍は涼香、次に静香を見て
「仲良くしてあげてね」
それだけ告げると、忍は静香の部屋を後にした。しばしの沈黙があったが
「しっかし、ビックリだねぇ。こんなことってあんだよなぁ・・・」
先に口を開いたのは涼香であった。そのまま手にしたうちわで仰ぎながら、氷の溶けてしまった麦茶を一気飲みする
「・・・・・・決めた」
その言葉にへ?と目を丸くする涼香をよそに、隣の部屋へのふすまを大きく開けた。
そこには、話題になっていた青年が持ってきていた荷物を出しているところであった
「なんだ?」
その言葉を無視して、静香は彼の前へと歩く。突然の出来事に目の前の彼は困惑していた
「償いをしてもらうの!」
顔を伏せたままだった静香がバッと顔を上げた。その表情は、いつもののんびりとした笑みではなく、真剣な表情だ
「・・・何を、すればいいんだ?」
すくと立ち上がって両手を広げる。普通に立ち静香と面と向かうと、その身長差がよくわかる
「あなたを」
「あなたを私の家来にする!!」
「「け、家来?」」
青年と涼香の声が見事に重なった。呆気にとられた涼香は次のアクションに動けないのだ
そんな呆気にとられている二人のことなど露知らず、真剣な表情のまま言葉を続ける
「あなた、名前は?」
「真田・・・・・・真田京介」
「真田・・・」
その苗字を聞き、ニンマリとした静香はズビシィ!と指さす。強く、力強く
「あなたのあだ名は“幸村”!良い?幸村だよ!!」
その言葉に鼻で笑った京介は
「じゃああんたのことは何て呼べばいい?」
と返した
すると静香は少し顔を赤らめ、もじもじとし始めた
(ここはやっぱり・・・ひ、姫とか?いやお嬢様もあり・・・?いやいや、それは変であって!)
うんうんと試行錯誤を繰り返す静香は、ようやく答えが出たのか唸るのをやめた
「私のことは・・・ひ「“お館様”だろ?」あ、あれ?」
静香の言葉に女性の声がかぶさり、この場での女性は静香を除いて一人しかいない。秋山涼香である
「あ、や、その・・・」
首を涼香、京介、涼香と巡らせてるうちに
「じゃぁ、決定だな。お館様」
了解した京介であった。やれやれという仕草で首を横に振る
「あれれ?てか京介さん、いや幸村さんは拒否んないの?家来のこと」
わざわざ名前を言い換えたところを見ると、もう幸村で安定らしい。もう一人である彼女も同じことだ
「色々とあるんでな。色々と」
そう言って京介は少しどんよりとしたオーラを纏う静香に手を差し出した
「これからよろしく頼むぜ、お館様」
考え悩んでいた静香は、とうとう諦め小さく溜息をもらすと、そっ とその手を握った
彼の手は大きく温かく
彼女の手は小さく、しかし彼同様温かいものだった
「よろしくお願いします、幸村」
こうして彼女と彼の間に奇妙な曖昧である主従関係のようなものができた
この曖昧な契約は脆く壊れ易い。ほんの些細なことで崩れるだろう
でも
それでも
なんとか彼の名前を出したし、タイトルに結ぶことができました
なんとも微妙な感じですがね・・・・・・ハハハ(から笑い