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3話を読む前にお詫びします。このお話はシリアスに見せかけたコメディーです。(ヒロインには悲劇ですが)これから先は180度の展開で何それ?!と思う読者様は読まない方が無難です。あらすじも書き加えますのでお許し下さい。

沢山の評価、お気に入り登録して頂き有難うございました。出来れば読んで頂ければ嬉しいです。





夜会の帰り、妹を乗せ帰路に着きながら、今夜起こった事を反芻する。


私の上官たる、エルンスト・フォン・ヴィッツレーベン元帥閣下の夜会に招待される栄誉を得た私は妹のシャルロッテをエスコートして参加した。





私はこの夜会である事を画策していたのだがそれが裏目に出てしまったよう




それは妹に同僚の男を紹介しようと考えていた―――それがこんな事になってしまうとは夢には思わず、今は後悔している。


最初の躓きは、その同僚が突如、密命を受けて急きょ夜会に来れなくなってしまった事に始まる。


夜会に出かけようとする直前に、その同僚から電話がかかる。


『すまないオットー、シャルロット嬢にお会いしたかったが、任務を優先せねばならず、後日必ず会うので許して欲しい。 それと俺意外の男を絶対に紹介しないでくれ!』


「ああ。今度、我が家に招待しよう」


『絶対だぞ!!』


念を押す同僚


そんなに妹を気に入ってくれて嬉しい限りだ。何しろ妹は美しいだけでなく気立ても良い自慢の妹


それなのに今だ婚約者はおろか、恋人すらいないのは、我が家が貧乏なばかりに社交場であるサロンにもパーティーにも招待されず、男性に会う機会が無かったせいだろう


私も軍に入り、家の為に出世ばかりに気をとられた所為で、妹の事を失念していた。


父もそれとなく知り合いに、妹に良い縁談は無いかそれとなくあたったのだが、誰もが良い返事は返さなかったそうだ。


私達家族は欲目で見ていて、実は妹は美しく無いのだろうかと悩んだすえ、最も信頼する同僚に妹の写真を数枚見せて、今度の夜会で妹と踊ってくれないか聞いてみた。


「是非紹介してくれ!! 流石にオットーの妹さんだ。こんな可憐な美しい女性が居たなんて信じられない。 社交界でも一度も噂にならないなんて奇跡だ!」


思った以上の反応だが、少し気懸りな事がある。


「だが、髪が私同様に赤いのだが」


妹は自分が赤毛なのを酷く気にしているのを知っている。何しろ、この国の美人の条件では、金髪が好まれ、赤毛は忌避されがちなのだ。


「俺は全く気にしない。寧ろ、情熱的な赤い髪にこの清楚な顔立ちなんて、益々お会いしたくなった」


「そうか?」


兎に角、同僚が乗り気なので安心する。 妹も気に入れば直ぐにでも婚約までいくかもしれないと喜んでいたのに


仕方なく会場では私が目を光らし、ズッと側に付き添い、男を牽制しなければならなくなるが、上官の御令嬢にダンスを申し込まれて断りきれず1曲踊る事になってしまった。


そして目を離した隙に事件が起きてしまう


ダンスをしている最中に妹が居た一角が騒然としており、令嬢に謝罪し急いで駆け着けば顔を真っ青にしてエルンスト様に謝罪し逃げ去る妹!


急いで側の人間に何があったか聞けば、妹が閣下の服に飲み物を掛けてしまったらしい


確かに大変な事だが、閣下も可笑しい


普段はこれ位の事で女性を叱責するなど考えられないお方。


女性に対する態度は儀礼的で冷たいと定説のあるお方だが、公衆の面前で女性に恥を掻かせるような事は無かった。


疑問は沸くが、取敢えず妹を慰めに行かないと


急いでテラスから外に出て捜すと暗い茂みから妹が現れ、その声は震え泣いていたのが分かり、初めて敬愛する元帥閣下に怒りが沸く


しかし私など一介の士官でしか無く、爵位も無いに等しい身


何も出来ない我身が口惜しかった。


妹を宥め、帰る事にするが貴族の付き合いとして直ぐには抜け出せないので、侯爵家の執事に妹を預け休ませてもらう事にしたのだが



―――何故ああ成るのだ??



妹が倒れたと耳打ちされ、急いで駆け着ければそこは元帥閣下の書斎のソファーに寝かされているのに、更に驚かされてしまう私


今夜は可笑しい


直観的に感じ、直ぐさま、眠る妹を抱き上げ執事が止めるのも聞かずに家に戻った。


車中でも、目を覚まして泣きながら私に謝る妹が憐れでならず、元帥閣下のなさりように怒りしか沸かない


しかし相手はあまりにも大きな相手


私らなど蟻のような存在で、悔しさを飲み込むしか無く、自分の力のなさに憤るしかないのだった。


意気消沈する妹は家に着くと直ぐ様、自室に籠もってしまう


両親に事情を説明すると、真っ青な顔になり、母は怒りながら泣きじゃくるのを父が慰めていると玄関に来客を知らせるベルが鳴る。


「こんな夜中に何だ? 私が見て参ります」


使用人の居ない我家では、自分から出るしか無く、両親を居間に残して玄関に向かうと更なる驚愕が待ちうける。





「フロイデンベルク少尉、元帥閣下がお呼びですのでお迎えにあがりました」


「元帥閣下が!!??」


これまで直接元帥閣下の呼び出しなど受けた事など無い身


数度お話をさせて貰ったぐらい


矢張り、妹の事をお怒りなのか?


「至急との事ですのでお急ぎ下さい」


「―――分かった」


夜会は終わった頃だろう。


謝罪もせず、侯爵邸を辞した事をお怒りなのかもしれない。


私は、もう終わりなのかもしれないと覚悟を決める。


折角、日の目を見ようとしていたが全ては家族の為


大事な妹を踏みつけて出世をして、男爵家の存続など何の意味があるだろうか


「少し待ってくれ、両親に出掛ける旨を伝えたい」


「手短にお願い致します」


両親に任務で呼ばれたと話し、心配そうな両親に見送られて軍用車に乗り込む。


妹の部屋を見れば、灯りも無く真っ暗だ


恐らくベットに潜り込み泣いているのだろう


せめて妹だけでも見逃して貰えるよう元帥閣下にかけ合おう


本来、公明正大なお方。


一般の兵士を駒としか考えない上層部とは違い、下級兵士も人として扱い、人命を第一と考える尊敬に値する人間のはず


しがない男爵家の倅の私がここまで昇進出来たのも、実力有視の元帥閣下が目を掛けて下さったお陰


きっと今夜は苛立っていた所為で虫の居所が悪かったのだろう


史上最年少三十五歳で、元帥の地位に昇りつめたエルンスト様は、今だ独身で浮いた話一つ無いが、持ち込まれる見合いは途絶える事がないのだった。


しかし、どんなに美しい御令嬢にも貴婦人にも見向きもせず、いい加減焦れた侯爵夫妻は、今夜の夜会で美しい貴族の御令嬢を大勢呼び集め、集団見合いを決行したらしく、それを知り、かなりご立腹だったのは聞いていた。


ダンスをしていた御令嬢は侯爵家の親戚筋で、閣下の従妹にあたられ、詳細を面白そうに教えて下さった。


その為に正確な情報なので間違いないだろう


困った事態に途方にくれるが


軍の車の中、どうすれば妹が咎められないように出来るかと考えを巡らせるのだった。








そして、連行されるように通された部屋は閣下の書斎だったが、扉の前では副官として一番の信頼を得ているエーベルバッハ上級大将閣下。


薄暗い廊下で不機嫌に眉間に皺を寄せていたが、私を見るなりニッコリと笑みを見せられるので、ゾクリと背筋に寒気がする??


顔は笑っておられるが、沸々と怒りを感じるのは気のせいだろうか?


元帥閣下と幼馴染で、一糸乱れずセットされた黒髪に銀縁のメガネをかけてはいるが、怜悧な美貌を少しも損ねずストイックな容姿は、元帥閣下と二分する程に女性達に人気があるお方。 しかし残念ながら既に妻帯者で、愛妻家。しかも二歳になる愛娘を溺愛しているのは有名な話


今夜の夜会は愛娘のアデーレ嬢が高熱を出されたので欠席されたはず( 普通の者がすれば確実にただでは済まない )


そのエーベルバッハ上級大将閣下を呼び出す程の緊急事態が起こったのだろうか?


「こんな真夜中にすまないね少尉」


私は最上級の敬礼をし


「いいえ。お呼びとあればいかなる時でも参るのが務めです」


「良い心がけだ」


「それより、何の呼び出しでしょうか」


本来は、私から口出しすべきではないが、妹の事があるのでつい言ってしまう


「君には、これから非常に残念な者を見せてしまうが、決して口外しないでくれ」


「はっ????」


残念なもの?


何の事だろうといぶかしんでいると


「まさか私もこんな事態が起こるとは想定外だった。取敢えず、中に入って貰おう」


恐れ多くも、上級大将閣下が自らドアを開いて入室を促され。部屋に入ると凄まじいアルコールの匂いと共に机で突っ伏す金髪の男性。机の上にはお酒の空瓶が三本開けられて空になって転がっている。


恐らく目の前にいる人物は、あの元帥閣下に違いないのだが


何時もキッチリとセットされた金の髪はボサボサで、しかも何かをぼそぼそと呟きながら鼻水を啜る音まで混じっている。


まさか、泣いている???


あまりの状況に口を開く事が出来ずにいると、上級大将閣下がツカツカト進み、机に突っ伏す人物に歩み寄ったかと思うと、右手を振り上げて金髪の頭を容赦なく殴る。


ガッツン!!


「ぐっウ! 」


「この腐れ外道! 酔い潰れているとは、良い度胸だなーエルンスト! 一体誰の為に奔走していると思っているんだ」


あろう事か、元帥閣下の胸倉を掴んで顔を上げさせ怒鳴りつける。


ハッキリ言ってそれは不敬罪ですと上申したくなる程だが


それよりも驚いた事に、何時も凛々しい元帥閣下の御尊顔は見る影も無く涙と鼻水にグチャグチャになっており見る影もない姿


なっ… 泣いておられたのかーーーー!!


こんな姿の元帥閣下など有り得るだろうか!?


有り得ない…


有り得ない!


有り得ない!!


絶対に、有り得ない!!!


目の前で起こっている事が信じられず脳が拒否してまう。


しかし、そんな私の状態を知ってか知らずか容赦なく上級大将閣下は元帥閣下にとんでも無い事を迫る。


「貴様、泣いていないでシャルロッテ嬢の兄に先ず詫びろ!」


詫びる!!!!!


誰が誰に?


止めて下さい、上級大将閣下!!


今直ぐこの部屋から逃げ出したくなるが


元帥閣下と推定する人物は、泣いて真っ赤に血走った目で私を確認するや否や


凄まじい勢いで私に迫って来るや否や


「シャルロッテ! シャルロッテ! シャルロッテーーーー!!」


「ヒィーーーーーーッ!!」


ガバッリ!


妹の名を叫びながら私に抱きついて来る元帥閣下と推定する男


不快感マックスで寒気がし


思わず振り払おうと思ったが、本物であれば拙いので、自分より背の高い男に抱きつかれるのを我慢する。


そんな私に上級大将閣下は惨い事を命じる。


「フロイデンベルク少尉、すまないがエルンストが落ち着くまでそのままでいてくれたまえ」


!!


思わず上級大将閣下を恨んでも許されるだろう


しかし、上官の命令は絶対だ。


「 ……… 承知しました」


そして私は、元帥閣下と推定する男が落ち着くまでジッと不快感と耐え忍ぶしかないのだった。







それから30分後に漸く落ち着いた閣下は執事に連れられ着替えをする事になり、その間、侯爵邸で一番豪華な客室に通されて、上級大将閣下に詳細をあらかじめめ教えられる事になるのだった。


「君に事態が呑み込めていないだろうから、私が説明しよう」


「宜しくお願い致します」


私は漸くこの事態に収拾がつく回答を得られるのかとホッとすると同時に、どんな話をされようと冷静でいられる自信があった。


それに薄っすらと元帥閣下のシャルロッテに対する気持ちにも気付いてしまう


何しろ30分間も泣きながら抱きつかれている間中に、シャルロッテすまないと何度も言われ、自分を嫌わないでくれと許しを乞う態度を見ていれば歴然だった。


シャルロッテ


私の自慢の妹はとんでもない大物を釣り上げたらしい


しかも本人の預かり知らぬ所で


これから起こる事を考えると頭が痛いが、シャルロッテの幸せになる道を選ぼうと、心に決意するのだった。









結構王道です。

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