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XXX




とうとうこの日が来てしまった……。


皇帝陛下の葬儀を立派に成し遂げた夫であるエルンスト様が今夜いらしゃる事を知らされて、思わず気が遠くなり倒れそうになってしまった私。


毎日何度も電話をお掛けて下さり、初対面の時と違い優しいお言葉で話され、まるで別人と話している様な気がしてならなかった。そして実際葬儀で会えば以前ほどではないけど冷い態度かと思えば苦しい程抱きしめてくれたりと戸惑ってしまう。


どちらが本当のエルンスト様なのだろう?


私には相変わらず振り回され不安しか湧かなかった。


そしてお仕事を終えられたエルンスト様がお帰りになり妻として出迎えようとしたけれど失敗してしまい呆れられたに違いない。


今はネグリジェにガウンを羽織りエルンスト様を寝室でロッソウ夫人に付き添って貰いお待ちしているが


「ロッソウ夫人 私にはエルンスト様が分かりません。受け入れる事出来るか不安です」

ついつい涙声で本心を漏らしてしまう。


結婚し夫婦になったけど、まだ数度しかお会いしていない相手。


そんな方と初めて床を共にすると思うと正直怖い。


「大丈夫ですから、心を落ち着かせベッドで夫を待っているだけで良いのです」


優しい慈愛に満ちた眼差しで慰めてくれるロッソウ夫人、最近ではより一層頼ってしまい侯爵夫人として対面を保っていられるのもロッソウ夫人のお陰だと感謝する毎日。


絶対の信頼を寄せている女性。


「何もしなくても良いのでしょうか…」


そう言う事にうとい私にはどうすればいいのかオロオロするばかり


「侯爵様が全てしてくれますから目を瞑ってジッとしていれば終わります。なにも憂える事などありません」


「はい…」


お母様と同じような助言に矢張りそうなのだろうかと思うけど…不安を全て拭えない私。


「それよりこれをお飲み下さい。少しは気分が落ち着くはずです」


そう言ってカップを渡されると温かい湯気がたち、良い花の香りがするお茶だった。


「いい香り」


お茶を受け取り一口飲むと少し癖のある味だが、ロッソウ夫人に気分を落ち着かせると言う言葉を信じて全部飲み干した頃には体がホンワリと温かくなり、少し気分が落ち着いたようなきがする。


「御馳走様」


空いたカップをロッソウ夫人が直ぐに片付けてくれると


「それでは、そろそろ伯爵様が御出でになるでしょうから私は下がります。灯りは小さいもの一つだけにして置きましょう」


「ありがとうロッソウ夫人」


何時も先回りするような心遣いに頭が下がるばかりで感謝が尽きない。


「いいえシャルロッテ様…」


一瞬何かを考えたように間を空け


「もう名前では可笑しいですので、これからは奥様とお呼びしなといけませんね――それではお休みなさいませ奥様」


「 ! はい。お休みなさい」


初めて奥様と言われくすぐったいがそれも一瞬で、薄暗い部屋で一人になると更に心細くベッドの端に所在なく座るしか無かった。だけど先程のお茶で体が温かいお陰か不安なドキドキと言うより不思議な胸の高鳴りを感じて戸惑う。


「どうしたのかしら?」


何だか変な気分のままエルンスト様をお待ちしていると


コン、コン


「入るぞ」


ビック!と慌てて立ち上がりお出迎えしようとドアに向うが、エルンスト様が自らドアを開いて入って来るが廊下の逆光でお顔が暗くて良く分からないが固まったように動かなくなる。


「ドアも開けず申し訳ありません」


急いでお詫びして頭を下げようとするが


ガッシ!


一瞬でエルンスト様に抱きしめられてしまうが以前と違い体がカッと火が付いたように熱くなってしまう。


どうしよう凄くドキドキする。


「シャルロッテ…」


初めて直に名前を呼ばれてしまい顔を上に向けるとあっという間にキスをされてしまう。


「ぁ… 」


結婚式以来の二度目のキス


アレからロッソウ夫人に鼻で息をするように教えられていたけど慣れずに上手くいかないせいか体が益々熱い。


苦しい……


もうダメっと思った瞬間に唇が解放されて新しい空気を思いっきり吸うが自分でもはぁはぁと恥ずかしい程に息が切れてしまっていた。


「すまない、大丈夫か」


「はい 慣れなくて申し訳ありません」


キスの所為で体がザワザワとして頭がぼーっとし、暗くエルンスト様のお顔が良く見えないお陰なのか自然に話せる。


「初めてなのに乱暴な私が悪いのだ」


エルンスト様も電話の時のよう優しい


「お気遣い有難うございます」


「夫婦になったのだから当り前の事。さあベッドに行こう」


そう言うと軽々と私を横抱きにして運ばれるので確りとエルンスト様の逞しい体にしがみ付けば夜着だけの薄い絹ごしに体温を感じてしまいドギマギしてしまう。


今から抱かれるのかと思うとクラクラとしてしまい酔っているような感覚。


とうとう本当の妻になるのだ実感してしまう。


優しくベッドに横たえてくれると私に覆いかぶさるようにエルンスト様が上になり考える暇も無く再び唇を塞がれ訳が分からず体が痺れたように苦しいような甘い感覚が次々と襲うのだった。


そして気が付けば私達は生まれたままの姿で体を重ねており恥ずかしさと自分の口から洩れる変な声に居たたまれず長い時間翻弄されて気持ちいいのか辛いのか分からないが突然その行為が止まる。


「?」


しかも再開する事は無い代わりに私をその大きな胸に閉じ込めるように抱きしめられる。

「許してくれシャルロッテ」


突然かすれた声で許しを乞われ驚いてしまう。


「エルンスト様?」


「今更だが……そなたの意志考えず無理やり結婚を急いでしまい私は随分勝手な男だった。全てはシャルロッテを愛してる故なのだ許してくれるか」


愛していると言われ何故か涙がじわりと込み上げる。生まれて初めて愛をささやかれエルンスト様に望まれているのだと悦びが体中を痺れさす。


「私のような者に勿体ないお言葉……嬉しい…」


「初めは冷たい態度を取ってしまったが周囲を欺きシャルロッテとの結婚を進める為だったのだ」


「そうだったのですか」


「考えてみれば私達の関係は急ぎ過ぎた、今…全てを奪うのは簡単だがそなたを大事にしたい。 だから今夜はここまでで少しづつ深めて行こう」


「……はい エルンスト様……」


そこまで私を想って下さるなんて本当はお優しい方なのだと知り感動してしまう。


「明日は共に朝食をとろう」


「はい」


「体を冷やすといけない」


そう言いって布団を私の体に掛けてくれ私を再び抱き寄せてくれるが未だ素肌同士。


体の熱も醒めぬまま抱き合い興奮して中々寝付けず悶々としてしまったが、エルンスト様の鼓動を聞く内に何時しか眠りに落ちるのだった。











そして二人は愛を深め帝国随一の美男美女夫婦でその夫の妻の溺愛ぶりは有名で末長く幸せな生涯を送ったと言う――――Happy End


――――とは簡単にならないのが現実。










たーーーーーーーーーーーーーたーーーーーーーーーーーーなーーーーーーーーーーーーーーい―――――――――――――!!


シャルロッテを抱きしめながら絶望に打ちのめされている私の脳内には、この「たたない」と言う言葉で埋め尽くされていた。





そう……勃たない。





何故、あそこが勃たないんだ!?


漸くシャルロッテの甘い体を余すことなく愛撫し、甘い吐息を漏らし感じ薄暗い明りの中で白い肌を浮かび上がらせ媚態を見せて興奮状態の筈なのに、いっこうに私の物が反応を示さない???


有り得ない!


漸く手に入れ五年分の欲望を解放する為に臨界点に達していても可笑しく無い状態の筈が項垂れたままで、うんともすんともしない。


初めての事に既に恐慌状態。


何とかシャルロッテを誤魔化したが柔らかく温かい体を抱きしめて寝る事にして乗りきるが……


裸のシャルロッテを抱いているのに一向に反応を示さない我愚息に初めて泣きたくなる。

最後に女を抱いたのは半年ほど前だろうか


若い頃は頻繁に寝室に送られてくる女を片っ端から抱いていたが勃たない事など一度も経験が無く、初めて愛したシャルロッテを抱こうとした途端にこの始末!シャルロッテをベッドに運ぶまでは、挿入可能まで勃起していたのに可愛く反応するシャルロッテに興奮するのに反するように萎えてしまったのだ……


一体私の心と体はどうなっているのだ?


優しいくしたいのに睨んで酷い言葉で貶め


抱きたいのに物が勃たない。


完全に心と体が相反していた。


アルに一度精神科に行って来いと言われたのを思い出す。


もしかするとこの症状を治さない限りシャルロッテを抱けないのか!?






グゥオッオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!





あまりのショックで灰になりそう……


せめてもの救いは腕の中に安心しきったように眠るシャルロッテの存在。


まるで天使のような清らかな寝顔に癒される。


五年掛かって手に入れた私の天使…いや女神。


初めて会った王宮の社交デビューの夜会、私が目の前に居るとも知らず大きな緑の目を涙で潤ませた真っ赤な燃えるような鮮やかな髪に反して透き通るような清楚な美貌の少女が鏡に映る自分を泣きそうに眺めていた。


――この娘が欲しい――


それは生まれて初めて感じた欲求。


侯爵家の嫡子として生まれ望まないのに多くの物を与えられ欲しいのは自由だったがそれすら努力するのも疎ましく放棄し父親の与える物を享受し続けた私が欲しいと思った者だった。


しかし背後の爺共も息を飲んでいるのを感じ直ぐに行動し、会場で少女の身元を直ぐに探り夜会名簿から抹消し好都合な事に少女は兄とあの後直ぐに王宮から立ち去っていたいたので難を逃れた。


しかも後で爺共が少女を捜そうにも何故かデビューの少女達がシャルロッテの事を口裏を合わせたかのように知らないと言ったので身元はばれずに済んだ。 そして爺共は苦労して捜すよりは手近な少女で欲求を晴らし楽しむ方をとったのだ。


だが油断は出来ずアルにシャルロッテの身柄を男爵家に知られないよう秘密裏に保護し誰も近づかないように囲い込んだのだ。


「あぁ……やっと手に入れた」


いい匂いのするシャルロッテの首筋に顔を埋め陶器のような肌を愛撫するが





「くぅーーーーっ 矢張り……勃たん……」





ガクッと、ここは諦めて明日の朝に掛ける事にする。


「朝の日差しに照らされたシャルロッテ~ ふっふっふっふっ楽しみだ」


もしかすると明るければ勃つかもしれないと野望に燃える。


そして大事な女神が逃げないように確りと腕の中に閉じ込めて眠りに就く事にするのだった。





しかしエルンストのHappy Endはまだ遠いのを知るよしも無く眠るのだった。


そう……愛する妻を得たと言うのに苦しい結婚生活が当分続くエルンストの本当の問題は自分自身!




何時か本当の幸せが訪れを願うのだった。





 ―――――――――To Be Continued―――――――――






作中EDに対しての表現があり、御不快に感じられた読者の皆様にお詫び申し上げます。広い心でお許し下されば幸いです。


取敢えず、おまけのオットー視点で完結になりますので最後までお付き合い下さい。

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