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行灯の昼  作者: 蒲公英
外からの風
9/77

3

居酒屋の中は、既にざわめいていた。

糸川はあっさりと中央の席に呼ばれ、俺と水元がはじっこに座ろうとした時、奥から声がかかった。

「長谷部さん、こっち空いてます。たまには真ん中に来てくださいよぅ」

見ると一際若くて華やかな一角で、それだけで俺の居場所は皆無だ。

「いや、ここで」

そう言いながら、詰めてもらって水元の横に腰を下ろす。

隣の席と形だけの乾杯をして、小皿と箸を回してもらって、近くの会話を聞く。


社内の人間だけで飲んでいるのだから、話題は社内の噂話とプライベートの話半々だ。

水元はちゃんと話についてってるし、時々後輩の大間違いを訂正したりしてる。

最近では、萩原がちょっと前まで経理に居た子とつき合ってるってのが旬の話題で、少しスキャンダラスな扱いだけど、当の萩原が口を噤んでいるので、それに尾鰭がついてたりする。

「いいんじゃない?最近、萩原は前よりも落ち着いてるし、他人のこと考えるようになったよ」

「同情につけ込まれちゃったんじゃないの?」

恋愛なんて当人にしか理解できないんだから、放っておいてやればいいのに。


水元が手洗いに立ったとき、その席に下田さんがすとんと座った。

「長谷部さん、なんでこんなにはじっこに座ってるんですか?私、長谷部さんとお話したかったのに」

上目遣いでそんなこと言われても、何を喋っていいかわからない。

大体、なんで俺にそんなに近寄ってくる?

あんたの目当ては俺じゃないだろうよ。

「長谷部さんって、お休みの日とか、何してるんですか?」

「寝坊して、洗濯して、テレビ見てるかな。たまに、映画見に行ったりはするけどね」

「映画って、どんなの見るんですか?私、最近映画なんて見てないですー」

聞かれたことに返事をしているだけで、会話になんてなってない。


「長谷部さんって、生田さんと一緒の部署で、大変ですよねえ」

「いや、あの人は仕事がきっちりしてるし、現場で頼りになる人だよ」

下田さんは顔を顰めた。

「長谷部さんって本当に優しいんですね。私、あんな風に文句ばっかり言う人、きらい」

優しいんじゃなくて、本当に生田さんは知識が豊富で、仕事は几帳面なんだって。

「長谷部さんの彼女って、幸せでしょうねえ」

「いないよ」

「えー?じゃ、私、立候補していい?」

はい?何に立候補だって?ずいぶん調子良いことを言うもんだ。

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