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「真面目に答えろよ。こんなんでも、ビクビクしてんだ」
俺の腕から頭を引き抜いた水元は、手で髪を梳きながら、笑った。
「長谷部君って、やっぱり自分を過小評価し過ぎ。社内で赤丸急上昇の人なのに」
赤丸急上昇……なんかしたか?
「生田さんってもともと、女の子には評判良くないしねー」
あれか?あの一件って、そんなにインパクトでかかったのか?
大体、あれは水元に準えただけで、他の人間のことなんて考えてなかったぞ?
「いや、生田さんはいい人だよ。現場での統率力もあるし、几帳面で」
「そういう問題じゃないの。長谷部君は今、選べる対象が広がってるんだよ」
水元の顔は意外とマジで、ただ、言わんとすることは間違ってる。
もうとっくに選んでいるのだ。
消去法で水元になったわけじゃない。
それに、これは水元からの答えにもなっていない。
「もう一回言い直す。結婚しようよ、水元」
「私、面倒だよ?」
「自分の好きでやることに、面倒って感覚はないもんだ」
答えろよ、水元。一緒に暮らそうって言ってくれよ。
水元は大きく深呼吸して、やっと俺の顔を見た。
「私に、失望しないでいてくれる?」
オトコマエで頭の回転が早くて、責任感が強くて。そんな水元は、ここまで自信がないのだ。
それを知っているのは、俺だけ。
ここまで心を開いて見せてくれるのは、俺に対してだけじゃないか。
「なあ、俺ってそんなに頼りないか?」
水元が静かに首を横に振る。
「返事、くれよ。俺は水元と結婚したい」
「後悔、しないでよっ!」
膝の上に水元の頭が、どさっと倒れこんできた。