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行灯の昼  作者: 蒲公英
行灯はやわらかに灯る
74/77

3

「……やり直して」

「またあ?」

確か、前にもそんなことがあった気がする。

「こんな、なんか不意打ちみたいな、私が構える間もなく、仕事の話して、テレビついてるところで」

理路整然とした水元の、慌てっぷりが結構笑える。

「違う場所なら、返事するっていうの?」

「するわよっ!」

「どういう?」

「するってば!」

その「する」っていうのは、どっちにかかっているんだ?


大体、やり直しとか言ったって、何度も折られるのは御免蒙りたい。

逆に、良い返事なら何度だって聞いてやるってことだけど。

「やり直してもいいけど、先延ばしはイヤだなあ」

「今返事をしろと?」

「断られるために、リトライするバカがいるか」

どうだ、尤もな理屈だろう。

水元はまだ困った顔をしていて、とりあえず言い分があるらしい。


「結婚って、結構難しいよ?」

「水元は俺と結婚したこと、ないだろ」

前の男と較べられちゃ、かなわない。全然違うだろう。

「家同士も絡んでくるし、長谷部君は長男だし」

「同居するわけじゃなし、本人の確認が先になるものだろうが」

本人の意思確認する前に、家への報告を考えるのは、本末転倒だ。

「バツイチだなんて、お家の人がどう受け止め……」

「あーだこーだ言わないっ!」

いい加減、焦れてきた。とっとと結論を寄越せ。


「長谷部君が怒ったぁ」

唇を尖らせ、水元が俺を見る。

「自分でいきなり話をはじめて、思い通りの返事しないからって、怒ったぁ」

そうなのか?俺が勝手に急かしたのか?

「人のこと動揺させといて、落ち着くの待てないで、怒ったぁ」

ちょっと矢継ぎ早過ぎた……か?

口を噤んで次の言葉を待つと、水元はテレビに向き直った。

まだ唇は尖ったままだ。


「……ごめん。困らせようと思ったわけじゃ」

言いかけて、盛大に笑い出す声が聞こえた。

「さすが長谷部君だわ。そこで謝っちゃうんだ!」

笑い止まない水元の頭を、力任せに抱えた。

返事しないどころか、遊びやがって。

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