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行灯の昼  作者: 蒲公英
行灯はやわらかに灯る
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2

「いきなりじゃないつもり、なんだけど」

テレビの方を向きっぱなしの水元の耳の色が、朱を帯びる。

「ねえ、テレビじゃなくてこっち見てよ」

腕を掴んだら、下を向きやがった。

「冗談じゃないんだから、ちゃんと考えてよ」

強めに声が出たら、蚊の泣くような返事が戻った。

「……勘弁して。恥ずかしくて死にそう」

勘弁ってのは一体何を勘弁するやら。

結婚しようって言葉への返事としては、いささか不穏当じゃないか。


「俺、なんかひとり相撲とってる?」

声が不機嫌になっちゃうのは、致し方ないことだと思う。

「水元もそう思ってくれてるんだと思ってたんだけど」

また返事がないので、顔を覗き込んだ。

掴んだ腕と逆側の水元の手が、俺のシャツの胸元を握る。

「やだ、そんなに矢継ぎ早に言うと、長谷部君じゃないみたいじゃない」

上がらない顔の横についてる耳は、真っ赤だ。


「こっち見て、水元」

水元の真意が知りたい。

「あんぽんたん」

「はい?」

ここに来て、その台詞の方が突拍子もないだろう。

「仕事頭になってる時にそんなこと言われたら、どう切り替えていいのか、わかんないじゃないっ!」

やっと上がった顔は、超動揺中。

水元でも、こんな顔するのか。

「すかたん!唐変木!」

そんなことを言いながら、まだシャツの胸元は握ったままだ。


「もしかして、照れてる?」

「もしかしなくても照れてるっ!」

おいおい、喧嘩腰で言うようなことか。

「で、どっち方向に向かってる?仕事頭と休日モード」

「今っ!今切り替えるっ!急に言い出す長谷部君が悪い!」

慌てた水元が面白いから、このままにしときたい気もするんだけど、結論が欲しい。

両手でこめかみを押さえて目を瞑る水元の顔は、まだ赤い。

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