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行灯の昼  作者: 蒲公英
今、手に入った
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6

会社員の夜は短い。

遅くまで起きていれば翌日の仕事が辛いし、辛いからと休めば信用度は下がる。

水元の冷たい足が、布団の中で俺の足に触れる。

それがどんなに幸福なことか、想像もできなかった頃とは違う。

朝起きぬけの、少しだけあどけない表情の水元が、インスタントコーヒーに湯を注ぐ。

「さて、行こうか」

アパートの鍵を掛けて一緒に駅まで歩くと、水元の肩がいつもより近い気がする。

ラッシュの電車でぎゅうぎゅう押されて、もみくちゃになりながら会社に着いた。

ロッカールームの入口で右左に分かれると、日常が開始する。

満足した夜に続いた朝、自分の中に力が満ちているのを感じた。


そうか。これが欲しくて、生活を共にするんだ。

ひとりだけの生活は、ひとり分の満足で、気兼ねはなくてそれなりに楽しい。

好きな女とベタベタしているのは確かに楽しいけど、いつまでもそれだけじゃ居られない。

今朝の水元は、穏やかな顔をしていた。

俺が望んでいるのは、それがこれからもずっと続いていくこと。

水元も同じだといい。


結婚しよ、水元。

今度、必ずそう言う。

昨晩感じた「手に入った」って確信を、手掛かりに。

剥き出しの感情と生活観を、ちゃんと摺り合わせしよう。

水元のトラウマや俺の鈍くささへの批判も、見せてくれて構わないから、俺のまだるっこしい感情も、受け止めてくれよ。

上手く言えるかどうか言ってみないとわからないけど、ちゃんと目を見て言う。

だから結婚しよう、水元。

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