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行灯の昼  作者: 蒲公英
タイミングの問題
62/77

5

年末の駆け込み工事と、経理の前倒し処理が同時に来る。

帰り時間もバラバラ、週末の予定が組めない。

唯一共通できる日曜日に、お互い一週間分の家事を済ませてから会う感じ。

いや、会社で顔を合わせちゃいるんだけどね。

それとこれとは話が別っていうか、見える表情が違うんだな。


「泊まっていかないの?」

帰り支度をはじめた水元の背中に、声を掛ける。

「明日、仕事だもん」

「ここから行けばいいじゃん」

外は寒いし、暗くてひとりの部屋に帰る必要はないんじゃないか。

「うん、やっぱり仕事の日は、自分の部屋からじゃないと落ち着かないのよ」

駄々をこねるわけにも行かないし、水元の生活の基盤が水元の部屋だってのは理解してる。

ここに居て欲しいっていうのは、俺だけの感情なんだろうか。


手を繋いで駅まで送る道で、また来週かと呟く。

「一緒に住まないか」

自分では、突拍子もない提案ではなかった。

こうなった期間は短くとも、その前から水元は、ずっと近くに居たのだ。

そして、これからもっと近くに居て欲しい。

水元も同じ気持ちだと思っていた。


「長谷部君、一緒に生活するって、どういうことかわかる?」

立ち止まった水元の顔は真剣で、こちらを向けと言わんばかりだ。

「剥き出しの感情と生活観を持ち寄ることなんだよ。週に一度泊まるのとは、違うんだよ」

そんなことを、考えたことはなかった。

俺は余程慌てた顔をしていたのだろう。水元の表情は、ちょっと緩む。

「ありがとう。本当は、すごく嬉しいの。強く言って、ごめん」

そして俺の手をぎゅっと握って、駅までの道をまた歩き始めた。


改札で手を振った後、水元の言葉が頭の中にこだまする。

水元は俺に、剥き出しの感情を見せたくないのか。

それとも、見せることで何かが起こると、怯えているんだろうか。


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