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行灯の昼  作者: 蒲公英
タイミングの問題
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4

水元の部屋は、確かに綺麗だった。

ただし、俺の予測を裏切った部屋でもあった。

六畳ワンルームは知っていたけど、白い家具に花柄のベッドカバー、手洗いに掛けてあるタオルはピンクだ。

ベッドに腰掛ける熊を、思わず手に取った。

「ずいぶん可愛らしい趣味だなあ」

「その子?シュタイフなのよ、可愛いでしょ?」

シュタイフとは、なんぞ?(注:ドイツのテディベア・ブランドです。すべて職人の手作業)


「なんか恥ずかしいね、自分の中身見せてるみたい」

風呂上りの良い匂いをぷんぷんさせて、水元が言う。

「身体、ほぐれたのか」

「さっきより幾分マシ。肩がバキバキ鳴るようになった」

俺の家にいるときとは違う部屋着は、もこもこした素材で、やっぱりピンク色。

会社でしっかり者の水元が、こんな少女趣味だって知る男は、そうそういない。

風呂場と手洗いは別々だ。

風呂場には用途のわからない瓶が並んでて、とりあえず石鹸だけ借りたら、俺まで花の香りになった。

花の香りのおっさん……考えたくない。


ベッドにうつ伏せにさせて、肩から背中までゆっくり押してやる。

ほぐしているうちに、水元の血行は少しだけ良くなって、指の先が暖まってくる。

手が滑ったふりで胸に手を回しちゃうのはお約束で、俺の部屋にいるときよりも更に寛いだ様子の水元と、狭いベッドを分け合って眠る。

朝起きたときに、熊を枕にしていて怒られたけど。

そして、食べる習慣のない朝食を摂る。

生活スタイルは、やっぱり違うのだ。


「あ、やだあ。歯磨きするときは、水止めてよ」

「新聞広げたまま、テレビつけないで」

俺の家にいるときより幾分口うるさいのは、ここが水元の部屋だからだろう。

他人の家だって遠慮がないんだな。

ベッドにごろりと寝転がると、「外に出る服のままで布団に乗るな」だ。

ああ、この辺の摺りあわせをするんだな、と思う。

これはこれで結構面白い経験だし、几帳面な水元らしいと納得もする。

少女趣味な部屋に、住みたくはないけど。

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