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行灯の昼  作者: 蒲公英
タイミングの問題
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3

水元はとても冷え性で、一度冷えてしまうと、風呂にでも入らない限り回復しない。

布団の中で、冷たい足を俺の足に挟みこむ。

「あったかーい。人間湯たんぽー」

「普段、どうしてんの?」

「人間じゃなくて、スタンダードな湯たんぽ」

「やっぱりババアだ」

水元の部屋には、まだ行ったことがない。

俺の部屋に来るようになってから、泊まった後に駅まで送るだけだから、行く機会がないのだ。

几帳面だから、部屋の中も片付いてるんだろうなと思うけど。


月末締めのバタバタで、金曜日の晩、水元は遅くまで残業をしていた。

俺が先に帰宅して、待っているところに電話が入る。

『ごめん、ヘトヘトのヘロヘロ。今日は自分の家に帰る』

「なんだよ、待ってたのに」

『家で、長風呂する。身体中ぎっしぎし』

また鉄板みたいな肩になってるのかも知れない。

俺の家で長風呂しても、構わないのに。


「じゃあ、俺がそっちに行っていい?」

ふっと思いついて、そう言ってみた。

『えー?狭いよ?明日にしようよ』

そう言われた瞬間、是非とも行ってみたくなる。

「何?俺が行ったら都合が悪いわけ?」

『そういう言い方するー。お風呂、一時間は入ってるよぉ』

「じゃ、時間見計らって行く」

何か言いたそうだったけど、ちゃんとした反論がないので、そう決定する。

見たいじゃないか、どんな場所で寝起きしているのか。


小一時間してから、電車に乗ると十時半。

手ぶらって格好つかないかなと思っても、もう何も売ってない時間だ。

途中にコンビニがあったから、シュークリームでも買っていこうかなんて、かなり浮かれ気味で歩く。

薄紙を一枚一枚剥いでいくみたいに、水元の生活が、自分とリンクしていく。

毎日会社で顔を合わせているのに、全然わかっていなかったことが、どんどん見えてくる。

そして、最後は生活を重ねて行きたい。

結婚しよ、水元。

俺の口は、そんな風に軽く動かない。


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