表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
行灯の昼  作者: 蒲公英
タイミングの問題
59/77

2

週末が楽しみだと仕事にハリが出ると、今更気がつく三十代半ば。

「長谷部さん、ちょっと図面だけ見てもらっていいですか?」

萩原のデスクまで行って一緒にモニタを覗いていると、野口さんまで一緒に覗きこむ。

相変わらず綺麗だな。

何年か前にこんな位置に顔があったら、緊張しちゃってモニタに集中できなかった。

ある意味、自意識過剰なんだな。俺がそこに居るってことを、彼女が意識するわけじゃないのに。


ありがとうございました、と頭を下げる萩原のデスクから離れて、ロッカールームに向かう。

ふと視線を感じて振り向くと、山口が立っていた。

「調子良さそうですね、長谷部さん」

「ん?変わんねーぞ?」

「いやいや、なんか最近、顔色がいいっつーか」

外から丸わかりな程、俺は浮かれているんだろうか。

俺が自分の顔を撫でると、山口は人が悪そうな顔で笑った。

「ほんっとに長谷部さん、素直で、大好き」

カマをかけて遊ぶのは、止して欲しい。


どんどん秋が深くなっていき、水元が居る週末が、回を重ねる。

どこかに出掛けるよりも、一緒に買い物に行って、お互いの食生活を見せ合うようなことが楽しい。

「都合の悪い日」には、ただ手を繋いで眠った。

洗面台には歯ブラシが二本並び、冷蔵庫に知らない調味料が増える。

一緒に居ると、細かい生活習慣の違いや、テレビ番組の好みの傾向の差がわかる。

はじめの時以来、水元は「自分が劣っている」とは言わないけれど、時々、俺に対して遠慮してるなと思う。

料理の味付けや掃除の方法で食い違うたびに、水元は自分の意見をひっこめる。

週末の一日だけでも、生活を水元の形に変えてしまえば良いのに。


十一月も終わり近くなり、俺の部屋には水元のパジャマが置かれるようになった。

チェストの引き出しを水元用にひとつ明け渡し、金曜の晩に一緒に帰るのが日常に変わった頃、会社の仲間にもバレた。

まあ、力一杯隠すつもりもなかったし、実は避妊もしてない。

俺の気持ちとしては、それくらいには固まっているのだ。

ただし、水元の考えを聞いたことはない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ