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行灯の昼  作者: 蒲公英
はじまりの実感
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2

たまには目的地を持たずにウロウロしようかと、新宿御苑に行ってみたりする。

だだっ広い芝生ばっかりが記憶にあったけど、整った様式の庭園は、結構見ごたえがある。

「風が秋の気配だね」

水元が伸びをして、俺の顔を見ながら笑う。

十月のはじめ、そろそろ強い日差しではなくなってる。

「あのさ、手、繋いでいい?」

黙って手を繋いじゃうほど、慣れてないのが情けない。


「そういうとこ、いちいち許可を求めない!」

返事と同時に、俺の掌の中に水元の手が飛び込んできた。

「こっちだって、なんて返事していいのか、困るじゃない」

「唐変木のあんぽんたん、だからな」

面白そうに笑いながら、水元が手を揺らす。

中学生や高校生の頃にこんな経験はないから、神経が手に集中してしまう。

女の子とつきあった経験はないわけじゃないし、遊んでたとは言えないけど、まあ一通りのことは……

うう、今までは、はじめっから「つきあう」と決めてつきあってたんだから、勝手が違う。


フランス式庭園の中は、秋のバラが綺麗だ。(バラとチューリップ以外、花の名前はよくわからない)

水元はいちいち花の名前を確認して歩く。

「優雅な花って、名前も優雅で楽しいよね」

俺はバラの名前になんて興味ないけど、にこにこしてる水元の表情は、見飽きない。

唇、柔らかそうだな。

そう思ったら、視線が離れなくなった。


今度は笑うなよ、こっちはマジなんだから。

ふっと目を閉じた水元が、心持ち顎を持ち上げる。

触れたか触れないかのかすかな感触で、顔を離した。

そのまま目を開けた水元が、微笑む。

半信半疑だったはじまりが、リアルな実感として押し寄せてきた。

水元が好きで可愛くて、大事にしたいし大事にされたい。

繋ぎなおした手は、暖かい。


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