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行灯の昼  作者: 蒲公英
どうしたもんやら
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6

水元のワンルームマンションの前まで送って、結局仕切りなおしも進展もなく別れる。

それでも何か、ほっこりとしたものが胸の奥にある。

約束はしなくても、水元との時間がこれからゆっくりと流れる予感がある。

次は、一緒に何をしようか。

次は、どんな顔を見られるんだろう。

触りたいとかキスしたいとか、そんなことよりも先に、水元ともっと近寄りたい。

お金を出せば相手してくれるおねーちゃんは居るけど、水元に望むのは、もっと別のことだ。


何年か前につきあってた女の子は、まず結婚の話が先立った。

俺より結婚に興味があったんだっているのは、今になって理解できる。

下田さんは、自分のフィルタを通してしか、俺を見てなかった。

水元は何年も掛けて俺を知っていて、情けないとことか口下手なとことか全部知っていて、それでも好きだといってくれた。

水元が辛い顔をしていた時も、仕事で走り回っていたときも、俺は何かしてやったわけじゃないのに。


何かしてやりたい、と思った。

俺は不器用だし、うまいことなんて言ってやれないし、連れて歩いて自慢って彼氏にもなれない。

でも水元が本当に、このままの俺を気に入ってくれてるんだとしたら、何か返したい。

俺を気に入ってくれたってだけで、何か大切なものを貰った気がする。

だから何でもいいから水元に、それ以上のことをしてやりたい。

こんなことを考える自分が、すごく青臭く思える。

いいじゃないか、経験値は低いんだから。


自分の部屋に帰って、壁のスイッチをぽつんと押す。

白っぽい蛍光灯の灯りに照らされた部屋は、味気ない。

一応の掃除はしているし、ひとりの時間を過ごすために、何不自由なく揃った部屋なんだけど、何か足りない。

夕方からの時間が充実したから、気がついたことがある。

仕事以外の人間関係で、会話を楽しんでいるのなんて、本当に久しぶりなんだ。

それが水元であることが、とても嬉しい。

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