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行灯の昼  作者: 蒲公英
どうしたもんやら
48/77

5

子供相手で歩き疲れたと水元が言い、すぐに座れる場所を探した。

「疲れてんなら、無理しなくても」

「やだ。忘れたフリされるから」

忘れたフリ……仕切りなおしってヤツか?覚えてんなら、何も仕切りなおさなくても。

「今日は素面だもん。幻聴じゃないって納得できる」

「……俺、ちょっと飲みたいかも」

少なくとも、デパート内の明るいレストランで言いたくはない。


「いいよ、帰るまでで」

にへっと笑った水元が、照れくさそうに頷く。

こんなに子供っぽい顔してたかな、水元って。

俺が知ってる水元は、気が回って頭の回転が早くて、責任感の強い女だ。

頼りになるけど可愛くないって話は、聞いたことがある。

可愛くないなんて、とんでもない。

これは「欲目」なんだろうか?


翌日仕事だから、あんまり遅くなる気はない。

九時過ぎには送っていこうと立ち上がる。

「忘れてないでしょうねえ」

くそ、そっちこそ忘れろ。照れくさくていけない。

大体、さっきから可愛くてしょうがない。

会社でそんな風に思ったことなんて、ないんだけどな。


地下鉄で水元の住む駅まで行って、一緒に歩き出す。

道の半ばまで歩いたら、水元は立ち止まった。

「仕切りなおし」

「うん」

先週みたいにイキオイがついてないから、言い難いったらない。

うう、と口籠もったまま、言葉に詰まる。

俺の顔を見る水元の目が光って、綺麗だ。

視線に吸い寄せられて、思わず顔を近づけた。


ぶぶっと吹き出した笑いに面食らったのは、その後。

「ごめっ……ごめんっ……なんか照れちゃってっ……」

身体を折り曲げて笑い出した水元が、途切れ途切れに言う。

途端にこっちも恥ずかしくなって、一緒に笑い出してしまう。

ムードも仕切りなおしも、ありゃしない。

今までただの同僚で、今日から恋人なんて変化は、なかなか難しい。


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