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行灯の昼  作者: 蒲公英
どうしたもんやら
45/77

2

「……嘘」

調子がいいことを言えるほど器用じゃないことは、水元も知っているだろう。

「嘘じゃないよ」

酔っ払いの目が、みるみる潤んだ。

「だって私、バツイチだしっ!」

「知ってる」

「若くないし!可愛くないし!」

「それ、さっきも聞いたから」

「長谷部君は優しいから、イヤだと思ってもなかなか言えないと思ってっ!」

「俺もそう思ってた。水元に迷惑じゃないかって」


住宅街の静かな道で、水元は困った顔で俺に拳を掴まれていた。

「急にそんな風に言われたって……」

いや、急に言われたのは俺も同じだから。

変なところで似た物同士らしいな、俺ら。

頭の回転が早くて気の回る水元は、意外なところでおっとりしている。


「うわあん、もったいないっ!」

水元は急にしゃがみこんだ。

「こんな大事なこと聞くのに、私、酔ってるうっ!長谷部君は二度とこんなこと言ってくれないぃっ!」

大学生らしき若い男が道を歩いてきて、俺たちをまじまじと見ながら通り過ぎて行った。

慌てて、水元を立ち上がらせる。

「言うっ!素面の時に言うから、立て!」

「嘘だね。長谷部君みたいなあんぽんたんは、そんなことしてくれないね」


ガキみたいになった水元の指示通りの道順で送った。

駅から十二・三分ってとこなんだろうけど、歩くのに三十分以上かけた気がする。

「ここ、私が住んでるとこ」

小さなワンルームマンションっぽい建物を、水元は見上げた。

えーっと。どうしたらいいのかな、こんな微妙な時。

「素面の時に仕切りなおすー。すかたんの長谷部君、おやすみー」

今一つ呂律の怪しい水元が、オートロックを開錠してロビーに消えていった。

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