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行灯の昼  作者: 蒲公英
どうしたもんやら
44/77

1

宣言通り酔った水元を送って、初めての駅に降りた。

家まで送ってからどうすればいいのか、なんて下世話な妄想をして、そうじゃないだろうと自分にツッコミを入れる。

土曜日の十時過ぎは、住宅街を歩く人は少ない。

「酔った勢いだから、言っちゃうよぉ」

妙に舌足らずで、酔った顔は真っ赤で、会社にいるオトコマエの水元とは別人だ。

「長谷部君って、ぜんっぜんわかってない。私が何を迷ってたんだかも、わかんないでしょ」


「水元って、前から……」

俺のこと好きなのかって聞くのはおかしいし、興味があったのかってのも、違う気がする。

「好きでもない男に、肩なんて触らせるか」

聞こえたんじゃないかってタイミングで、水元が言う。

「下田さん、辞める時に私になんて言ったと思う?長谷部さんは水元さんのこと、女として見てないって言ってます、残念でしたー、だって」

くそぉ、と小さい声で呟くのは、いささか水元らしくない。

ってか、女って怖い。思い込みだけでそんなこと言っちゃうのか。

「どうせバツイチだよ。若くもないし可愛くもないよ」

いきなり俺の肩に拳が降ってきた。


「だから、黙って好きでいる予定だったのにっ!」

続いて降ってくる拳を、思わずよけた。

「一回だけ記念にデートしちゃお、なんて思ったら、続けて誘ってくれるんだもん!期待しちゃうじゃない、この唐変木がっ!」

おいおいおいっ!ここで暴れるなっ!ってか、なんかすごく予測外の展開に……

もう一度振り上げられた拳を掴む。


酔って焦点の合わない目が、俺を懸命に見ていた。

「ばか。いいよ、慰めてくれなくて」

慰めてるんじゃなくて、ええっと。

「俺が言いたいこと、水元が言っちゃったんじゃないか」

急展開に、頭がついていかない。

「唐変木で、悪い。俺が気がついたのは、つい何日か前だ」

「何によ!」

「水元ともっと一緒にいたいってこと」

水元の目が大きく開き、拳から力が抜けた。


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