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行灯の昼  作者: 蒲公英
唐には変な木が生えている
43/77

7

「なんか、怒ってる?」

おそるおそる聞いてみる。

「すかたん」

「へ?」

「あんぽんたん」

「なんで?」

「もういいっ!」

水元はぷいっと横を向く。

素面だよな、大して飲めないんだから。


黙ってしまった水元を、どうしていいもんだか持て余して、俺も黙って梅割を飲んでいた。

「長谷部君って本当に……」

水元が急に笑い出したので、機嫌が直ったのかと一息ついたら、次の言葉でふいを突かれた。

「鈍いにも程がある」

「何が?」

思わず声が大きくなる。

「とうにはへんなきがはえている」

「何だよ、それ」

「唐変木って言ったのよ、すかたん」


唐変木って、すかたんって、俺?

「ここのところ、ずっと態度に出してたつもりなんだけどなあ。そんなに私の態度って、気にならないかなあ」

水元は頬杖をついて俺を見る。

「それって、あの」

意味がやっと頭に届いた。

「ずいぶん遠慮してたんだよ、私。バツイチだし、トシもトシだし」

ええっと、それってその、俺が受取りたいように受取っていい言葉なんだろうか。


「鳩が豆鉄砲食らったみたいなって表現、あながち間違ってないね」

頬杖をついたままの水元が、表情を崩さずに続ける。

「すっごく照れくさいんだけど。何か言ってくれないかなあ」

何か言えって言われたってね、何を言えばいいって言うんだ。


俺は、口下手だ。ツラも女ウケしない。

だからまさか、普段の俺をそう思ってくれる人がいるなんて、想像もしていなかったのだ。

確認の言葉が出そうなのを、慌てて飲み込む。

水元は膨れた顔でメニューを開いて、オーダーを聞きに来た店員に、俺が飲まないワインを頼んだ。

「酔ったら、長谷部君の責任で送ってってよ」

水元のリミットは、確か中ジョッキ三分の二だった。

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