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行灯の昼  作者: 蒲公英
唐には変な木が生えている
42/77

6

いつも通り夕方になって、帰ろうと電車に乗る。

乗換駅で別れようとして、帰り時間が惜しくなった。

「晩メシ、食ってかない?」

水元は不思議な顔で笑った。

「やっと、誘ってくれた」

やっと……?えーと、それって。

頭を一生懸命使っている間に、水元が歩き出す。

「とうにはへんなきがはえている」

歌うように呟いた言葉には、聞き覚えがある。

「それ、何か意味がある言葉?」

「わかんないんなら、いい」

わかんないから、聞いたんだろ。


普通に居酒屋に入って、ぼんやりと水元の顔を見る。

今日は綿のセーターにジーンズ、カジュアルな分若々しく見えて、やっぱり会社で会うのと違う。

「悪いな、晩メシまでつき合わせちゃって」

「あのねえ。休みの日にまで、気が向かない相手と出掛けると思う?」

水元は頬を膨らませて、子供っぽい顔をした。

「長谷部君って、自分のこと過小評価してない?下田さんにだって、向こうから誘われたんでしょ」

だってあれは、何かの勘違いで。

「ほら、そうやってびっくりした顔する。甲斐のない男ね、まったく」

ふう、と溜息をついた水元が何を怒っているのかわからない。


「黙られちゃうと、何言っていいのか悩むのよね」

そう言った後、水元はふっと笑う。

「ま、いいや。長谷部君が長谷部君だって証拠みたいなもんだね」

それからはいつもの話になって、水元は機嫌良く皿をつつく。

気が回るのもいつもと一緒で、俺のジョッキが空く前に、追加のオーダーをしたりする。

楽だな、水元と一緒にいると。

水元も楽だと思ってくれてるといいな。


「水元って、俺と一緒に出かけたりメシ食ったりして、楽しい?」

聞いてしまったのは、肯定して欲しいからだと思う。

俺は、すごく楽しいんだって言いたい。

「ばか」

戻ってきた言葉が意外で、思わず顔を見返した。

「私、一回だって不機嫌な顔した?してないよね、楽しんでるんだから。そんなこともわかんないの?」

言葉が喧嘩腰で、うろたえる。

俺は何か、気に触ることを言ったろうか。


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