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本気で自分を阿呆だと思ったのは、久しぶりだった。
女の子ってのは取っつき難い存在で、そこをどうにかこうにかクリアしなければ、近寄れないもんだと思ってた。
だから唯一緊張しない女である水元は、恋愛対象から外れてる筈だ。
にもかかわらず、俺は水元と一緒にいるのが楽しいし、プライベートでもっと親しくなりたいと思ってる。
今ですら仕事の人間関係より、ずいぶん近くなっているのに。
bunkamuraで目的の絵を見た後、水元が言う。
「このまま原宿まで歩いてお茶しない?好きなカフェがあるの」
カフェねえ。女の子って店の雰囲気がどうの、カップがどうのって調べるの、好きだよな。
水元の歩調に合わせて、ぶらぶらと歩く。
「俺さ、この辺の道、不案内なんだよね。どこ歩ってんのか、ぜんぜんわかんねえ」
「私は学生の頃、散々ウロウロしてたから」
その後、学生の頃何をしたかという話になって、同年代だと微妙にクロスしていて面白い。
「男子校から工学部だったからな。サークルも入ってなかったし、バイトは実入りの良いガテン系だった。今考えると、しみじみと寂しい青春だなあ」
「長谷部君らしいー」
「それ、褒めてないから」
にこにこしている水元が、方向を指差す。
「そこの通りの奥。ちょっと小道になってるから、穴場なの」
向かい合わせに落ち着いて、ビールのレモンジュース割なんか飲んでる。
ちょっとだけ冷たい風が吹いていて、半分デッキに出ているような席だと、冷え性の水元は肩が冷えるんじゃないかと気になった。
「席、交換しない?こっちの方が風があたらない」
照れくさそうな顔をした水元と、席を交換した。
「長谷部君って、ちゃんとそうやって気を遣える人なんだよね」
確認するみたいに、俺の顔を覗き込む。
その顔が、妙に可愛く見えた。