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行灯の昼  作者: 蒲公英
唐には変な木が生えている
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4

「妹がねー、二人目出産で、家中ばたばたなのよ。不肖の姉、助っ人ー」

その言葉にほっとしながら、なんだかなあと考える。

本当なら、自分もそんな時期だもんな。

水元は女だから、もっと強くそう思っているかも知れず、そうすると俺と遊んだりするのは、生産性にもとる行為じゃないか?

いや、暇つぶし程度か。

「でも、今週は平気。どこか遊びに行きたい場所があったの?」


うっ、と詰まった。ないんだ、そんな場所は。

水元と遊びに行きたかっただけ。

詰まった俺の顔を見ていた水元が、笑った気がした。

「私ね、今、bunkamuraに来てる絵が見たいんだけど」

「おお、それ。じゃ、今週行こうか」

そうして約束して、普通に仕事する。

なんだかワクワクしてしまい、自分の脳味噌に「この浮つきようはなんだ」と問い合わせたくなる。


残業帰りにまた水元が自分の肩を揉み解していたので、声をかけた。

「揉んでやろうか?」

すぐに手が右左に振られ、苦笑いが戻る。

「大丈夫大丈夫。前ほどひどくないから」

「じゃ、お先にー」

経理のブースを出たら、ひとりごとめいた呟きが聞こえた。

「とうにはへんなきがはえている」


戻って聞き返すのもおかしな感じだし、俺に聞かせるつもりなら、多分呼び止めただろう。

書類読み上げたのかも知れないし。

週末を潰させて申し訳ないような気分と、それを上回る高揚感。

どうも俺は、水元と一緒に週末を過ごしたいらしい。

水元も楽しんでくれてると、いいなあ。

そして、もっとお互いの気心が知れれば。

……知れれば、どうなるんだ?


間抜けなことに、その時にやっと気がついたのだ。

水元とどうにかなりたいなんて思ってなかったから、自分で気がつかなかった。

もっと水元と深く知り合って、できれば毎週予約で埋めてしまいたいくらい、プライベートで会いたがってる。

俺って、自分への反応も、すっごく鈍い。

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