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「あー、今週はちょっと予定アリ」
5回目に誘った時、水元はあっさりとそう言った。
それに対してショックだったのが自分でも意外で、驚く。
なんとなく水元も、俺と同じように次にどこに行こうか楽しみにしてくれてる気がして、本当は自分だけが楽しんでるのかな、なんて。
だとしたら、下田さんと同じじゃないか。
下田さんだって、俺が楽しんでると思ってたかも知れないじゃないか。
なんだか俺、浮かれてたのかも知れない。
喋りやすくて、誰から見ても女で(俺は忘れてたけど)、一緒に外出しても違和感のない水元が、俺と一緒で楽しそうに見えてるから。
だけど、それが水元の「ケースバイケース」ってヤツで、俺に合わせてくれてるだけだったとしたら、俺だけが阿呆じゃないか。
それにしても、何の用事なんだろう。
見合い、とか?うわ、それも可能性はあるのか。
俺だって、実家から何回か言われたことはあるぞ。具体的な話にはならなかったけど。
……困る、のか?水元が決まった相手と会ったり、見合いしたりすると、困るのか俺は?
友達ならば、祝福してやって然るべきじゃないのか。
最初に結婚した時、祝儀持って結婚式に出たじゃないか。
二次会の幹事まで引き受けて、シャンパンタワー仕組んだりしてさ。
あの時は別に、困らなかったぞ。
まあ、今みたいに一緒に遊んだりはしてなかったけど。
なんだか考えるのが面倒だ。
大体、何の予定かなんて聞いてどうする。
その時はその時、ケースバイケースだ。
女とでも友達付き合いできると学習しただけで、良しとしなくては。
これからでも、そんな相手ができるかも知れない、その練習だ。
今更それを学習しても、使えるかどうかわかんないけど。
その週の週末、溜まった洗濯物を干しながら考えていたのは、そんなことだった。