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行灯の昼  作者: 蒲公英
忘れてた、かも
30/77

2

翌日元気に出社した水元を見て、ちょっと安心した。

あんなに疲れるまで、張り詰めなくてもいいのに。

でもそれが水元の水元たる部分だし、だからこその信頼ってのも大きい。

「おはよ、長谷部君。昨日はありがとね」

「おう、よく寝たか?」

「晩御飯も食べずに寝たわ。おかげで、朝から空腹で目が覚めた」

笑いながら通路を歩いていく水元を、ちょっと振り返って見た。

腰、細かったよなあ。痩せてるわけでもないのに。


男ばっかりと喋る職場は、色気はなくとも気楽だ。

作業着と安全靴は、しゃれっ気なんて出したくても出ないし、ヘルメットを被るわけだから、髪も短きゃいい。

余所の部署の若いヤツなんかは、帰社するとせっせと洗面所でワックスを使っていたりするけど、俺は帰って寝るだけなんだから、そんな必要もない。


「長谷部さん、設備施工部、忙しいですか?」

萩原が顔を見せる。

「ああ、津田から連絡来てたヤツ、今回はちょっと無理だわ。そっちが使ってる工事業者と違うところ、いくつか紹介するから、あたってみて」

「長谷部さんが無理って言う時は、どうにも調整がつかない時ですもんね」

萩原にいくつかの社名と電話番号をメモして渡す。

「俺には相談しないのか、萩原?」

今日は機嫌の良い生田さんが、コーヒーを啜りながら言う。

「生田さんなんて、大文句言って説教した挙句に『ダメ』じゃないですか」

「説教は俺のライフ・ワークだ。つきあえ」


なんであんなにぽんぽんと、軽口に持ち込むことができるんだろう。

言葉だけ聞いてると、とんでもないやりとりでも、本人たちは気軽で楽しげだ。

別にクソ真面目なつもりはないけど、言葉尻に怯んでしまう俺に、あのテンポの会話はできない。

後ろから肩を叩かれ、振り向くと水元と新人さんが立っていた。

「今月の経費、出たよ」

財布が薄い時期に差しかかっているので、どうもどうもと受け取ってから、思い出した。


「あ、水元に昼メシ奢んなくちゃ」

「なんで?」

あれ、なんでだっけ?ま、いいや。

「いや、前にそんなことを言った気がする」

「光栄だけど、お弁当持参なの。夜にしない?」

「高価いじゃん」

「お酒飲まないから、そんなでもないでしょ。はい、決定」

答えそこねると、水元は新人さんを連れて去って行った。


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