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行灯の昼  作者: 蒲公英
いつもの風景
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3

「長谷部さんって、糸川さんと飲みに行ったりしてるんですか?」

経理の派遣社員の下田さんは、なんていうかイマドキちゃんで、仕事よりもプライベート優先の雰囲気を漂わせてる。

小さな可愛い顔と、明るい色に染めた髪と、短いスカートだ。

大体ろくすっぽ口を利いたことのない俺に、何故こんな風に話しかけたかって言うと、サービス部の新人の糸川が俺に懐いてるからだ、と見当がつく程度。

利害関係がわかりやすくて、素直っちゃ素直なんだな。


「たまにはね。糸川も今、忙しいから」

「どんな話するんですかぁ?今度、連れてってくださいよぉ」

他の男目当てに気がつかなくて、気がついたら自分が除け者になっていたことは、何度もある。

座を取り持つほどの話術は心得てないから、俺以外で盛り上がってる話を耳にしながら、ただ同じテーブルに向かってるだけで、結構消耗する。

好意を持ちつつある女の子に、そんなことをされると、結構へこむんだな。

だけど悟りきった傍観者になるほど、俺もまだ諦めちゃいないわけさ。


三十四にもなれば、それ相応に家庭なんか持っちゃって、子供の一人二人ってのは、俺が学生の頃抱いてたイメージなんだけど、今の自分を鑑みてみれば、それはあんまりリアルな空想じゃなかったらしい。

そりゃ、彼女がいた時代はあった。

一番最近だと五年くらい前に、やけに「結婚したら」って言葉の出る女の子がいたな。

俺がそこまで盛り上がる前に、とっとと他の男を見つけて結婚しやがったけど。

「あなたは、結論が見えてるんだか見えてないんだか、わかんない」

「もっとじっくり考えようよ」って言ったときの、返事だった。

つまり、結婚が見えてれば待てるけど、これから考えるんじゃ話にならんってこと、だったらしい。


山口と野口さんが、一緒に会社を出て行く。

あんまり生活の見えないカップルだけど、これから一緒にメシ作ったり、洗濯したりすんのかな。いいなあ。

ドラマみたいな恋愛や、分不相応なロマンスは、期待したくたってできない。

ただ俺みたいな地味な男を、気に入ってくれる子がいれば、大切にしたいとは思う。

実際のところ、職場以外で女の子と話すことなんてないし、職場の女の子の眼中にも、入ってないけど。

つまり、お見合いシステムみたいなところに金を落とすか、このままジジイになっていくか、なのかも知れない。

両方とも、嬉しくはない。

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