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行灯の昼  作者: 蒲公英
止しとけって
24/77

4

「えええっ!今日も帰っちゃうんですかぁ?」

昼過ぎに待ち合わせて映画を見て、更に夕食も済んだ土曜日の晩。

「明日も休みなんだし、もうちょっと遊びましょうよ」

俺の腕にぎゅうっと巻きつく細い腕。

だからね、そうすると、胸がそのまま押し付けられるんです。

「遊ぶって言っても、俺は夜の遊び方なんて」

「お酒飲みましょう?ね、もうちょっと」


止しとけよ、そう頭の中で、自分の声がする。

こんな状態で女の子に誘われたら、のっぴきならないことになるぞ。

その気なんて、全然ないくせに。

腕に感じる胸は、なんだかそのままベッドに直行許可みたいで、ヘタな妄想をしそうだ。

このまま酔わせてやっちゃおうかな、なんて不埒なことを考える程度には。

たとえば萩原あたりなら、遠慮せずにいただいちゃうんだろう。

ダメだって。俺はそんなに器用じゃない。


「下田さん」

今だ、今なら次はないって言える。

「はいっ!」

お預けを解かれたワンコロみたいな顔で、良い子のお返事をする下田さん。

「……送って行けないから、遅くなったら危険でしょ?」

誰か、俺の阿呆を怒鳴ってくれ!

「私の家、大通り沿いですから、そんなに怖くないんですよ」

「女の子が夜中にひとりで歩かない方がいい」

うーわっ!分別&オヤジ臭い、良い人発言だ。どの口がこんなこと言ってる!


「わかりました。来週にします」

口を尖らせた下田さんが頷く。

待て待て待てっ!誰が来週約束した?

「月曜にはまた会えるんですもんね」

いや、普通に仕事に行くだけなんだけど。俺は、阿呆だ。

「来月、お誕生日でしょう?どこかに行きます?」

総務!総務!個人情報は!

「とりあえず、おとなしく帰ります。おやすみなさい」

地下鉄の入口に消える下田さんを、呆然と見送る。

なんだかもう、話が「つきあってる人たち」だ。

手を出そうが出すまいが、そんなことは関係ないらしい。

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