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行灯の昼  作者: 蒲公英
止しとけって
23/77

3

どう否定しようかと考えているうちに、下田さんの愚痴は発展していく。

「いつも忙しそうだから、わかんない処理を聞くのも悪いかなーと思って、こうだろうって処理すると、違うって怒られるし」

「わからない処理の質問しても、怒られないでしょう」

「だって、先月教えたでしょ、とか言われて」

ああ、頭を抱えた水元が浮かぶ。経理の処理に曖昧が許されないのは、俺だって知ってる。

「下田さん、専門職派遣だよね?」

「そうです。ビジネススクールで、経理の勉強しましたから」

そうか、条件は合ってるって言ってたな。


派遣先が交代を希望していて、派遣社員がそうしたいと言えば、それでOKなんじゃないかと思うんだけど、契約の中には色々あるのかも知れないので、俺には何も言えない。

「派遣先変わっても、長谷部さんには会いに来ますから」

「ええっと」

「今週末、どうします?」

「えええっと」

なんだか考えが纏まらないうちに、週末の約束に巻き込まれる。

二度目はない、どころの話じゃない。


「下田さんくらいの子から見て、俺ってどんな風なのかなあ」

俺からすれば当然の疑問なのに、下田さんはけらけらと笑った。

「頼り甲斐があって、落ち着いてて。オトナだなーって感じ」

すっげー誤解。

俺が落ち着いて見えるのは、俺の代わりに誰かが主張してくれるからだし、中も外も十年前と大して変わってない。

「俺ね、昔っから年寄り臭いって言われてたんだけど」

「昔からオトナっぽかったんですか、いいなあ。私なんて落ち着きなくってぇ」

物は言いよう。


勝手に喋って勝手に機嫌を直して、下田さんが帰っていく。

悪気はないし、可愛いんだよな。

だからつい、週末の約束をしちゃったのだ。

にもかかわらず、相変わらず下田さん本人への関心なんて、全然抱いてない。

これでも彼女は、満足なんだろうか。


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