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行灯の昼  作者: 蒲公英
止しとけって
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1

女の子に向かって怒鳴るなんて、萩原らしくないじゃないか。

しかも相手は一般職とは言え、萩原より2年先輩(つまり、同じ年)だ。

口を突っ込むつもりはなかった。

泣きそうになっている経理の女の子に、俺も用事があったから、ということにしておく。

「ねえ、指定請求書の送付先に、ウチの打ち出しの請求書が送付されてるみたいだけど」

そう割り込んだら、萩原の怒りはその部分だった。


説明しておくと、エア・トラッドの打ち出しの請求書っていうのは、基本的に打ち込んだ売上がすべてアウトプットされる。機器販売だけなら、別に何の問題もない。

問題があるのは「工事一式」だの「コミッションのあるもの」、もしくは客先が請求形式を指定している場合だ。

「工事一式」で請け負っているのに、売り上げとしては細々と人工代やら材料代やらと計算しているので、それを相手に見せたくなくて、営業からの申請で、別の書式に変更する。

「申請書、わざわざ手渡して念押しただろ。うるさい会社だからって」


「ごめんっ!ちょっと会議室に入ってっ!」

割り込んできた水元に、三人とも会議室に押し込まれて、半泣きの経理の女の子は水元の隣に座った。

「明日、各担当者と客先に、課長からお詫びの連絡するところだったの。偏に私の指導力不足っ!申し訳ない!」

両手を合わせる水元の、言外の意は理解できた。

今までなかった頻発するトラブルの原因は、アレだ。

一緒に手を合わせる女の子に、萩原も怒り続ける気は殺がれたらしい。

「派遣、交代しないんすか?」

その代わりのように、辛辣とも言える言葉が出た。


「ここだけの話、今、派遣会社と折衝中。条件だけは、派遣会社に依頼通りなの」

主語のない会話なのに、誰の話だか全員が理解してる。

「決定じゃないし、本人も知らないから、口外無用よ。特に長谷部君」

いきなり名前を呼ばれて、驚く。

「ピロウトークでも、止めといてね。私も今逆上気味だから。自分の指導力に、自信なくなったわ」

ピロウトークってね、そんな関係じゃないんだけど。

経理部二名が会議室を出て行き、萩原は盛大に溜息をついた。

考えてみれば、こいつの彼女は前年度経理の派遣社員で、問題が多くて契約更新しなかったのだ。

水元も、気が休まる暇がないだろう。

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