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行灯の昼  作者: 蒲公英
なんで俺よ?
20/77

8

「土曜日は、ありがとうございました」

月曜日の朝、にこにこしながら下田さんが言う。

「あ、いや、どうも」

こんなタイミングで、「次はありません」とは、とてもじゃないが言えない。

こうやってどんどん、タイミングを逃していくんだ。


営業開発室の山口が、珍しく作業ジャンパーを着て、一緒に現場に来るという。

「山口、作業着似合わねえなあ」

「長谷部さんが似合いすぎるんですよ。ザ・現場の人」

作業着がやけにハマっているのは、自覚している。

我ながら、現場仕事自体が向いていると思うし、俺には事務も営業も無理だ。

ヘルメットを抱える山口を、横目で見る。

整った顔と長い足は羨ましいが、こいつの外見で俺の中身なら、アンバランスこの上なし、だ。

グズグズした性格じゃあない筈だけど、「打てば響く」とは言えない。

まあ、ごつごつした外見に、ごつごつした中身が入ってるだけのことだ。


遅くなって現場から帰社すると、給湯室で水元がおかしな動き方をしていた。

「何してんの?」

「腰痛体操」

痛いときにそんなことをしても、すぐには治らないんじゃないかと思う。

「目の疲れが肩に来て、肩から腰に来るの」

そして、当然のように俺に肩を向けた。

「なんだ?俺は水元の専属マッサージ師か?」

「いいじゃなーい。女の肩なんて、滅多に触れないでしょ?」

襟に手を突っ込んでるんならともかく、服の上からじゃときめかない。


「下田さんとデートしたんだってねえ」

世間話のように水元が言う。いや、世間話か。

「早いな、土曜日の話だぞ」

「ロッカールームで下田さんが、はしゃいでたもん。仕事もあれっくらい熱心になってくれるといいんだけど。さて、さんきゅ。もうちょっと仕事してくわ」

水元は独身だから、遅くなっても誰も気にしない。

「水元、ひとり?」

「課長がまだ残ってる。大丈夫だよ、煮詰まってないから」

笑った顔は、相変わらずのオトコマエだ。

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