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行灯の昼  作者: 蒲公英
なんで俺よ?
19/77

7

下田さんと行った美術館はとても混雑していて、人酔いしそうだった。

ひとりで出る時は混雑する午後を避けて昼前に動くので、それだけで結構疲れる。

「美術館なんて、小学校の社会科見学以来。絵だけじゃないんですね」

下田さんの感想は、絵やオブジェについてではなくて、「美術館」についてだった。

つまり、併設のカフェやミュージアムショップの佇まいについて、だ。

「おうちのダイニングがこんなにシックなら、ステキですねえ」

「ショップなんてあるんですね。雑貨屋よりセンスのいいディスプレイ」

うん、美術館や博物館に興味のなかった女の子なら、当然の反応なのかも知れない。


可愛い女の子が隣を歩いているってのに、一向に上がらないテンション。

仕事の義務で接待してるみたいな気になるのは、職場以外の顔が見えないからだと思うんだけど、オンもオフもこういう子なんだな。

よく言えば裏表なく、悪く言えば深みがない。

素直なんだけど、自分の中に溜め部分は少ない。

若いから、なんて言葉は爺むさいけど、実際にそのギャップは大きい。

「長谷部さん、聞いてます?」

「ごめん、ぼうっとしてた」

だって、下田さんのカラオケの点数が何点だって、聞いたって仕方ないだろ。


「これからどうします?」

軽い夕食を済ませた後、下田さんが言った。

どうもこうも、俺は帰るつもりだった。

「軽くお酒?それとも、カラオケでも」

「いや、そろそろ帰ろう?駅まで送ってくから」

「また誘ってくれるんなら、帰りますけど」

面白くなさそうな下田さんを地下鉄の入口まで送って、ふうっと溜息をついた。

下田さんは、あれで楽しかったのか?

話が弾んだわけじゃないぞ?ってか、相変わらず意味がわからなかったぞ。


チェックの半袖シャツから出た自分の腕を、無意味にさすってみた。

贅沢を言える立場でも、イキオイで恋愛できる年齢でもないんだ。

だからって、手近に懐いてきた女の子とどうにかなろうなんて、相手に対して失礼じゃないか。

二度目はないことにしよう。

下田さんがどう考えていても。

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