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行灯の昼  作者: 蒲公英
なんで俺よ?
18/77

6

「長谷部さん、今週の土曜日はお時間ありますか?」

下田さんに声を掛けられたのは、水曜日の朝だった。

「いや、特にはないけど」

給湯室でしたい会話じゃないなあ。

彼女は派遣社員だから、任期が終わればいなくなるけど、俺はずっとここにいるのだ。

「じゃ、どこかに行きません?」

ここで黙ってしまうのが、俺の悪いところだ。


「長谷部君、おっはよー」

水元が入ってきて、下田さんは話を打ち切った。

「じゃ、長谷部さん、また後で」

俺もコーヒーを貰って出ようとすると、水元が話し掛けてきた。

「下田さんとつきあうの?」

そう、なっちゃうのかなあ。なんだかずるずると、引き摺られて行くような気がする。

「長谷部君が、振り回されるだけ振り回されそうだね」

今、まさにその自覚はある。


「水元は、もう結婚しないの?」

バツイチなんて珍しい話じゃないし、水元はいいヤツだ。

「うーん。そう決めてるわけじゃないんだけどね。ま、めぐり合わせだから」

ちょっと肩を竦めた水元は、自分のカップにコーヒーを注ぐ。

冷え性の肩凝り、内勤の総合職は少ないから、現場に出ている俺より、責任は重い筈だ。

「いい男、いるといいな」

心の底からそう思う。

離婚の原因は知らないけど、やつれた顔をして仕事していた水元は、知っている。


「長谷部君に心配される筋合いはないの。自分がガンバレ」

オトコマエな仕草で拳を突き出した水元と、拳をぶつける。

若くはないけど、そんなに年を喰ってるわけでもない。

下田さんと一緒に出掛けるくらい、いいか。

俺も彼女を知らないんだから、知ってみる努力くらいしてもいいかも。


「いいよ。じゃ、美術館にでも行ってみる?」

下田さんにそう言ったのは金曜日の朝だ。

「美術館?やっぱりオトナな趣味ですね。いろいろ教えてくださいね」

好きなだけで、別に詳しくはない。

「下田さんは普段、どんなところに出掛けてるの?」

「カラオケとか、ショッピングとか」

うーん。それは俺の行動パターンの中には、ない。

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