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行灯の昼  作者: 蒲公英
なんで俺よ?
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4

前向きに検討しましょうったって、何があるわけじゃない。

俺は下田さんと一緒に飲み食いしたり、映画を観に行ったりしたいわけじゃない。

確かに可愛いけど、それ以外にアピールしてくるものが見当たらないのだ。

あの後下田さんからは、ずいぶんあからさまな攻撃を喰らうようになった。

それはみんな気がついていて、俺がもてないのも、今彼女が居ないのも知っているから、当然俺が応じるものだと思ってる。

正直、居づらい。


朝の給湯室で、下田さんと目が合う。

「コーヒーですか?お茶?」

自分で淹れるから、大丈夫だってば。

「長谷部さんはお砂糖なし、ミルクだけでしたね」

他の人間が居てもお構いナシの彼女の態度に、ちょっと閉口する。

なんで俺で、どこが気に入った。

本当はそう問い質したい。

だけど、一生懸命アプローチされるってのが、そもそも今迄にないことで、それを切り出す隙がない。


そうこうしているうちに、なんとなく「出来上がる間際のカップル」扱いされはじめ、下田さんは下田さんで、金曜日の夕方に設備施工部に無意味に顔を出す。

これで白ばっくれることのできる男がいたら、それは女に慣れているヤツに違いない。

少なくとも、現状を動かさないことにはにっちもさっちも行かなくなった気分だ。

「長谷部、お待ちかねだぞ」

生田さんにまで声を掛けられ、帰り支度を始めると、ロッカールームの前に下田さんが待っていた。


「一緒に帰りましょう?」

俺、下田さんがどこに住んでるのか、知らないんだけど。

「長谷部さんって江古田ですよね?私は千代田線だから、この近所で食事が都合いいですよね」

「俺、住んでるところなんて、教えたっけ?」

「総務の人が、言ってました」

おい、総務!個人情報漏れてるぞ!

俺の頭の中に構わず、下田さんは話を進めていく。

「どこか、オススメのお店、ありますか?」


柔らかそうな髪が、ふわっと揺れる。

小さい顔と女の子らしい仕草は、ちょっと庇護感情をそそる。

可愛いし、勘違いでもなんでも、俺に好意を抱いてくれてる。

こんな子を見逃したら、当分彼女なんてできないかも知れない。

流されるがままでも、別に構わない……か。

会社から少し離れた多国籍料理の店で、ただ夕食をとっただけだ。

喋ったのは八割下田さんで、相槌を打った六割は、内容が理解できなかった。

「長谷部さんって落ち着いてて、安心なんです」

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