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行灯の昼  作者: 蒲公英
なんで俺よ?
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営業推進室の山口と一緒に、客先に打ち合わせに出向く。

打ち合わせって言っても、折衝するのは山口のみで、技術的な質問や建築や設備の設計と空調の設計のすり合わせのために同行してるわけだ。

それにしても、と、山口の顔を見る。

俺より下のクセに、室長代理で話を進めるだけあるな、こいつ。

相手の言い分を飲んでるように見えて、実はこっちの都合最優先で話を進めてる。

さわやかにゴリ押しして相手に納得させる手腕を、授けて欲しいものだ。


客先から帰社すると、ちょうど昼休みに入るところだった。

「わあっ!長谷部さんのスーツ姿、初めて見ました。似合うー」

財布を持った女の子集団から、下田さんが抜け出してくる。

……なんだろう、この子。

山口や津田なら確かにスーツは似合うんだが、基本的に作業着の俺は、革靴自体が得意じゃない。

苦笑いした山口が隣をふっと外れて行き、俺一人が下田さんと向き合ってしまった。

「お昼休みですよね。一緒に行きません?」

思わず後退って、首を横に振る。

女の子の集団となんて、どっち向いてメシ食っていいのか、わかんないし。

「やだあ、残念。じゃ、次の機会にまた誘いまーす」


何が「やだあ」なんだか、あのイキオイだと、次にまた声を掛けてきそうだ。

俺に近寄ったって、メリットはないだろうに。

大体、彼女は大きく俺を誤解していそうだ。

はあっと息を吐いて自分のブースに戻り、上着を脱いで財布を持った。

同じことをして通路を歩いてきた山口と、一緒に階段に向かう。

「長谷部さん、狙われてますねえ」

「そんなわけ、ないだろ。やけに懐いてるけど」


本当は、ちょっとそんな気がしてるんだ。

ただ、自惚れた後に当て馬だったってことも、過去に経験がある。

可愛い顔の下田さんは、俺に目をつける必要なんてない。

たとえ仕事ができなくったって、一度お願いしたいって男が山ほどいる筈だ。

だから、本当に「気がする」だけね。

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