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行灯の昼  作者: 蒲公英
外からの風
11/77

5

「なんで二次会に参加しなかったんですか?カラオケ、大盛り上がりだったのに」

月曜日の通路で、また下田さんに声をかけられた。

「最近の歌、わかんないから。若い子ばっかりで行ったんでしょ?」

「そんなに新しい歌ばっかりじゃありませんよう。今度、一緒に行きません?」

二十代前半の「古い歌」は、三十代半ばには「最近の歌」だったりするんだ。

「あんまり得意じゃないからね。楽しくて、良かったね」

下田さんのヒラヒラしたスカートは、膝頭の覗く長さだ。


「あれ?今日は内勤ですか?」

萩原に声をかけられて、やっと下田さんが横を離れる。

女の子大好きでマメな萩原は、どうも下田さんが気に入らないらしい。

下田さんもそれを理解してて、開発営業部にはあまり近づかない。

尤も、開発営業部で独身なのは、萩原の他には、奥方を早くに亡くした五十過ぎの次長だけだけど。

「午前中にちょっと設計して、午後から現場。萩原は?」

「俺はこれから、フォレストハウスです。担当の人が几帳面だから、早めに行かなくちゃ」


席に戻ってPCを開けたら、営業推進室からメールが届いていた。

翌日に設計事務所と施主を交えて打ち合わせ会をするので、出席しろという。

課長に報告して、現場との兼ね合いの指示を仰ぎ、午前中はバタバタと過ぎていく。

早めに昼飯にして出掛けようと、作業着に着替えてロッカールームを出たら、水元にぶつかりそうになった。

「おや、現場?行ってらっしゃい」

設備施工部の派遣さんは、「派遣先の会社では人間関係をつくりませーん」って感じの人だから、女の声で「行ってらっしゃい」なんていうのは、滅多に聞かない。

「今日は外が暑いから、脱水しないように気をつけてね」

はいはい、ということを聞いて、外出する。


水元とは入社研修から一緒で、特に何かのかかわりがあるわけじゃなくても、なんとなく「同志」な気分だ。

結婚式のウエディングドレスは綺麗だったけど、その一年後に疲れた顔で出社していた時も、俺は何もしていない。

仕事に支障をきたすこともなく姓が以前に戻った時も、特に原因を聞いたわけでもない。

あくまでも同期の括りの中の仲の良さで、男と喋るのと変わらない。

ただ、他の女の子と気安く口が利けないだけなのだ。

だから現場から会社に戻った時、下田さんから言われた言葉に驚いた。

「水元さんと話してる時って、楽しそうですよね」


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