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行灯の昼  作者: 蒲公英
外からの風
10/77

4

水元が戻っても、下田さんは移動せずに俺の横に居続けた。

喋るテンポが俺の二倍早いんじゃないかと思うんだけど、一生懸命にこっちに話題を振ってくるから、応えないわけにも行かない。

一言二言答えると、話題がまわりに移っていき、俺についていけないハイテンションで話が展開する。

そして勝手に盛り上がって行き、最後に戻ってきたときには、まったく別の話になっているのだ。

酒の席なんだから話題がよれるのは当然だけど、それに相槌を強制されるのは、ついていけない人間には結構苦痛だ。

どうにかこうにか笑った表情だけ作ってるけど、時々「どう思いますぅ?」なんて、隣の席から顔を窺われるので、全然気が抜けない。


下田さんは確かに可愛いし、下世話な話、持ち帰るかと聞かれたら、身体だけなら持ち帰りたいかも……なんてことを考えてると、余計に話題に乗り遅れ、そこを笑われたりする。

「長谷部さんって天然ボケ。おもしろーい」

何かを誤解している下田さんが隣で身体を捩ると、ミニのスカートの裾が乱れて、思わず目を逸らした。

「二次会は、カラオケでデュエットしましょうよ」

「いや、俺は二次会はパス……」

「行きましょうよ。連行!」

ぐいっと引かれた腕の中ほどに、柔らかいかたまりがむにゅっと押し付けられた。

それね、オジサンには刺激強いです。


居酒屋から出て、二次会に不参加の面子と一緒に駅にとっとと向かう。

「長谷部さん、今日はずいぶん楽しそうでしたねえ」

いや別に、いつも通りだったけど。

ただ、話にはずいぶん参加していた気はする。

ちんぷんかんぷんではあったけどね。

そういう意味では、下田さんに少し感謝しなくてはならないかも知れない。

腕に当たった胸のふくよかさとは、また別問題としてね。


いつの間にか隣を歩いていた水元が、ちらっと俺の顔を見上げる。

「下田さん、ずいぶん懐いてたねえ」

「ん?ずいぶん酔っ払ってたみたいだったね。なんかテンション高い子だよなあ」

「惚れられちゃったんじゃないの?」

「俺に?まさか。ひとまわり上だぞ」

地味なパンツ姿の水元は、不思議な顔で笑っていた。

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