現在 1学期 期末テスト
やっべー。
ホントにそう思ってる?と聞き返したくなるようなテンションで滝谷が廊下に立っていた。
そう。バトルの前にも例外なく定期試験はやって来た。
1学期期末テストの上位の成績順が貼ってある順位表の前。
東波学園は、スポーツ推薦や一芸入試で入って来る者が多いが、勉学が緩いという訳でもない。
個人の成績は各自の学内パソコンと家庭へ送られてくる上で、総合順位と主要科目上位のそれぞれ20位までが職員室前の廊下に貼り出される。
この科目ごとというのが珍しいだろう。なかなか細分化されている。
というのも特待制度の中に"主要教科の学年上位3位までの者はその学年の授業料免除"という特別なシステムがあるのだ。
もちろん総合成績の優秀者への特待制度はあるが、それとは別に得意分野のみで特待生になれるこの制度は受験時に人気があり、この為に東波を志望する者が多い。
何たって東波の学費が高いのは有名で、その分カリキュラムや設備の充実度、進学時の推薦枠などの手厚さは他校と比べようがない。
ただし、3回、4位以下になった者はその学期分からの授業料の支払い義務が生じ、以降、特待生に戻ることはできない。
その為、途中で自主退学する者が少なくないのも致し方ないのだろう。
そして滝谷佳祐は「社会科」の科目特待生だった。
「うわ、滝谷今回6位じゃん。どうしたの。」
私と並んで見にきた奏美の眉間にシワが寄ってる。
滝谷はお調子者で普段ふざけてる割には成績が良くて、1年次は「総合地理」と「歴史総合」では小テストも含め常に満点だった。
そのせいか、学年首席の我がクラス委員長の大森からは若干冷たく当たられている節がある。
「俺、公共合わねえみたい。」どうしよっかなぁと既に諦めムードを漂わせている。
滝谷のくせに。諦めるのは早いってば。
奏美がポジティブポジティブ!と肩をポンポン叩いて、脱力している滝谷を教室に連行して行った。
それにしても。
あのド陰キャくんは、どうしてどこにも名前がないんだ?
中身は最年少博士号のバブだというのに!
期末テスト前、バブから1年次の時の試験問題と学年の成績結果データが欲しいと言われて、忙しい中わざわざ送っておいたよね? 一体何をしてたんだ、あの人は。
私も今春からの編入生なので、1年次の参考データとして学園から渡されていたものだった。
という事は、キミももらったのでは、とモヤモヤ。
帰国前だとしても1週間やせいぜい10日前くらいだと思うんだけどな。ねぇ、どこにやったのかな、バブくん。
私が物持ち良くて良かったね。
校内では相変わらず一言も喋らない根暗な安堂尋様なので、話も出来やしない。既に振り返るなと釘を刺されていた。
教室では前後の席だというのに、後ろがシベリアほど遠いぜ。くすん。
面倒くさいと思いながら1日我慢して、帰宅早々問い詰める。
「バブ!何位だったの?」
ノールックでキッチンにあるパソコンを指差す。
家庭用の、というかシノブさんのパソコンだ。
私達の成績もここに届いている。
私には面倒なデータを頼んだくせに自分は。勝手に見ろって?
奏美じゃないが、きっと今、私の眉間にもシワが発生しているに違いない。
ダメダメ!私はモデルの亜美ちゃんだった!
慌てて指で眉間を伸ばす。危ない危ない。
パソコンは既に立ち上がっていて、スクリーンセーバーだった。
マウスを動かすと成績表の画面になっている。きっとシノブさんが見ていたんだろう。
バブは、っと。
えーと、総合が21位。惜しいじゃん。
科目別が......全部同じ、21位?
あ、化学基礎だけ24位。
え。どういう事?
目を真ん丸にして振り向くとソファでタブレットを見ていたバブと目が合った。
「化学基礎、今回からでデータがなかったから合わせられなかった。」
意味のわからない言葉が聞こえてきた。ニホンゴ言った?なんて?
「でもあれで21位だったら総合で20位以内入っちゃってたしな。」とかなんとかブツブツ言ってる。
ねぇ、呪文唱えてたりする?
どうやら天才バブさんは、表向き目立つのを避けつつ遊んでいたのだ。廊下に貼り出されない次点を全科目で取ること。
その予想数値を去年のデータから割り出していたってこと?
それでその目標設定した点を取ったって事?
ただ、化学基礎だけは2年の1学期から始まった科目で、まだ中間テストの結果しかなかったからデータ不足だったって?
もぅヤダ。気持ち悪い。
この人本気でバカなのか。天才って本当に紙一重なの?
だいたい、どうやってそんな神技が可能なの!!
こっちは英語と数B、化学以外は頑張って勉強してたんだよ。そんな時間に何やってんだか。
(ちなみにその3科目は私、ノー勉でも20位以内に入ってるよ、褒めて!)
「逆に目立つんじゃないの?」
話を聞いていたハナから冷静な一言。
仰る通り。でも。
「いや、東波の職員の連携はそこまで取れてない。問題ない。」だそうです。
ちなみに彼の君は予測統計学の実地訓練だとか言ってたよ。
学園で下を向いたまま、毎日どこを見てるんだろう。
1日バブになってみたいよ。その頭の中、見せてもらって理解できるのかな。




