表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BABY BOMB!!  作者: 未芹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/14

プロローグ 23年前 中東 

バブ&べべ。

最高にキュートでカッコイイ男女のバディです!

世界を敵に回す政府公認の闇の殺し屋業をご覧ください。

まずは23年前のプロローグから。

どうぞー!

 中東の戦火を逃れた小さな村の外れ。

この村に住む11歳の少年ハッサンは、早朝から村外れの水汲み場までやって来た。

少年に課せられた毎朝の仕事だ。

8人家族1日分の水を汲み終わらなければ学校へは行けない。

急がなきゃ。


 ここのところ、近隣諸国の動勢が良くないと村のあちこちで聞くが、住んでいる者たちはこの小さな村を捨てて逃げ出す余裕さえない。

この数日は遠くから聞こえてくる爆撃や銃撃の地響きに深夜、未明を問わず飛び起きる日々が続いていた。

 今朝は珍しく静かな朝を迎えている。

久々に寝静まった物音ひとつしない薄暗い家を誰も起こさぬようひとり抜け出す。

 夜明けが迫って来る。陽が昇るのって早いよな。

徐々に明るくなってきた空を見ながら朝日と競争する。

道を急ぐハッサンの視界に、穏やかな風景とは似つかわしくないモノが飛び込んできた。


 内戦が繰り返し勃発する隣国の煽りを受けてこの村が暴動に巻き込まれる事は頻繁にある。

が、これは...

 空が明るさを取り戻す中、見えて来たのは。

倒れている女性は明らかに魂のない抜け殻になっていた。

だが、ただの遺体ではない。

 もうあと僅かで陽が昇る。

既に明るくなって来た乾いた空が、その姿を晒し始めた。

 そこにあったであろう両目はくり抜かれ、眼窩はぽっかりと大きな空洞になっていた。そして、腹部は縦に大きく掻っ捌かれていている。


 見せしめだ。

見慣れている筈の戦場の遺体より遥かに敵意の見えるそれが村の誰か思い当たった。

 カヤだ。

近隣の学校に校医はいない。

カヤは代わりにボランティアで異国から来ている看護師だった。確か、ニホンジン。

一ヶ月前、突然行方不明になった。

未婚の彼女は臨月だった。


 よく遅刻するハッサンにも、いつもくったくのない笑顔で迎え入れてくれた人。

 そして。

ハッサン、ご飯は食べてる?勉強は楽しい?と声をかけてくれていた。

 生徒全員の名前を覚えていて、みんなから慕われていた女性だった。


「ベイビーのパパは誰?」

 この国では未婚の出産なんて珍しくないから、悪気なく訊いた事があった。

「神様よ」

笑ってそう答えたカヤは少し大きくなってきたお腹を優しく撫でた。

 ところどころヒビの入ったコンクリート造の校舎の壁にもたれ、僅かな日陰で息をつく。

そのハッサンの隣で、目を細めたその笑顔が本当に幸せそうで、うっかりその言葉を信じるところだった。

 その時の笑顔と、今の状況の余りにもの落差に頭がついて行かない。呆然としていたが、カヤに近づけなかった理由はもうひとつ。

 カヤの傍に男が立っていたのだ。

身動きの取れなくなったハッサンがそこにいる事は最初から気づいていたんだろう。

ゆらりと振り向いたのは、全身からの殺意を隠そうともしない、アラビア語で"シャイターン"


 悪魔だった。

殺される!

実際、1秒とかからず殺されていたと思う。

だがその悪魔は憎悪の炎を(たぎ)らせたままハッサンの横を通り過ぎていった。

 次に水汲みに来たナディアが驚いて大人達を呼んで来るまで、ハッサンはその場にへたり込んでいた。

 譫言(うわごと)のように"シャイターンが来た"と繰り返して高熱を出したハッサンの言葉で、その男がカヤを(なぶ)り殺したんだろうという事になった。

 それから半月後、ある国家の闇の仕事を請け負っている巨大殺人集団が壊滅させられたというニュースが世界を駆け抜けたが、この小さな村には届くことはなかった。


 しかし。

ハッサンが悪魔だと思ったのは(あなが)ち間違えでもない。

 全世界に於いて優秀な殺人者(マーダー)には報奨金がかけられており、毎年上位100位がリストにあがる。

それを見て各国は敵対者への殺しを、どのターゲットに誰を依頼するか決定する。

勿論身を守る方も狙ってくるマーダーの殺しを別のマーダーへ依頼する。

 こんな負のスパイラルが生み出す報奨金ランキングという訳だ。

 

 その世界ランク不動の1位の座に長年いる男こそ、カイザー。

ハッサンが遭遇した悪魔だった。

 ひとりで町を2、3壊滅させるなど当たり前。

爆弾で破壊した直後、劫火の中に平然と立っているカイザーの目撃情報は枚挙に(いとま)がなかった。

 冷徹無比で赤ん坊から老人までカイザーの後には累々たる遺体の山が築かれる。

 カイザーが通った後は地図まで変わるといわれるのは、嘘みたいだが本当の話だ。


 そのカイザーが音信不通になった、らしい。

らしいというのは実際のところ誰にも判らないからだ。

ただ、カヤが殺され、その半月後、部隊の壊滅。

この殺しの精鋭部隊を壊滅出来るのはこの世でカイザーしかいないと専らだったが、その噂の出所もどこからの依頼なのかも全く確認出来ないまま、男は消息を絶った。

 何が起こったのか誰にも判らず、またいつこの闇の帝王に突然襲われるかも判らないという恐怖に怯えながら、世界は沈黙の闇に包まれた。


 あれから23年。

あらゆる謎を残し生死不明のカイザーは、相変わらずその報奨金で国を作れると言われる巨額の報奨金受給者のまま、マーダーランキング1位の殺戮者として伝説となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ