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リリー・レンフレットの骨拾い  作者: 三色団子
第一章

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6/12

6


 リリーが家に帰り着くと、辺りはすっかり真っ暗であった。


 リリーの父は遅くに帰ってきた娘を見ても何も言わず、ただ不機嫌そうに酒を飲んでいる。


 父は足が悪く、杖がなければまともに立って歩くことさえ困難だった。


 そのため、稼ぎのほとんどをリリーに依存しており、自分はといえば、日がな一日、椅子に座ってただぼーっとしながら安酒を飲んだくれているだけである。


 当然、少ない稼ぎのほぼ全て、酒代に消えている。


 そんな父にリリーは拾った金属を見せるべく机に置いた。


 父は一瞬険しい表情を浮かべ、何かを確かめるように瞬きを繰り返す。


「お前、これ、どこで」


 あまりの父の豹変ぶりに、リリーは困惑していた。


 これまで貧民街の道端で死体のように倒れている人と同じ表情か、怒っている表情かしか見たことがなかった父が、驚愕と歓喜に頬を引き()らせている。


「どこで拾った」


「帰りに。道で」


 リリーはそれが自身への質問であり、返答を求められていると認識し、声を出していいのだと判断した。


 久々に出した声は、自身のモノと認識できないほどにか細く、擦れて、隙間風の音にさえ負けそうなほどだった。


 父は「そうか」と酒の入ったグラスを一気に呷り、一つ息を吐いた。


 次いで、リリーに手を伸ばす。


 リリーは反射的に目を瞑って肩を(すく)めたが、痛みが襲ってこないと分かってゆっくりと(まぶた)を開けた。


 父はリリーの頭を撫でて「よくやった」と褒めたのだ。


 リリーは口をぽかんと開けて目を白黒させた。


 父にではないが、頭を撫でられた経験は何度もある。それこそ、今朝だって、頭だけでなく全身をくまなく撫でられた。


 だが、それとこれとではまるで違う。どう違うのかをリリーは言語化できなかったが、ひとまず、不快なものではないことは確かであった。


 事態を呑み込めず、呆けているリリーをよそに、父は手を離して続けた。


「これは金貨だ。とても貴重な物だ。見つけたら必ず拾ってこい。何においても優先的にだ。いいか、分かったな」


 リリーはとりあえず頷いてみせた。そんなに貴重な物だとは思っていなかったし、今でもその感想は変わっていない。しかし、父の言うことは絶対である。


「それと、これと同じくらいの大きさで、銀色の物があったらそれも拾ってこい。鉄貨と間違えるなよ、銀貨だ。いや、とりあえず硬貨は全て拾っておけ」


 リリーは一も二もなくまた頷いた。銀貨というものをリリーは見たことがなかったが、似たような物を片っ端から拾って父に渡せばいいというなら、自分にもできそうな気がしていた。


「よし、今日はもう寝ろ」


 言われてリリーは二段ベッドの上に上がった。


 藁に布を被せただけの布団に横になり、体を丸めて目を瞑る。


 木製のベッドは、寝返りを打つどころか少し身じろぎをするだけでも軋んで音を立てる。父はその音が嫌いで、リリーはその度に怒られてきた。


 今ではすっかり、一切動くことなく眠る術を身に着けていた。


 それでも、眠るときはいつも父に怒られたことを思い出して、今日も動きませんようにと祈りながら目を閉じる。


 しかし、今日はどこか晴れやかで、安心に緊張が緩んでいた。


 胸の奥がぽかぽかと温かくて、お腹いっぱいにご飯を食べた時のように満たされた気分だった。


 リリーは初めてといって差し支えがないほどに、その夜はぐっすりと眠れたのだった。


〇ストーリー要約

・拾ったのは金貨だった

・リリーは父に褒められた

・心安らかに就寝

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