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遅めの朝食を済ませたリリーはその後数時間歩いたが、然したる成果は認められなかった。
というのもやはり、リリーの知っているゴミ捨て場はすでに漁られたり、片付けられた後であることがほとんどだったからだ。
道中に落ちていた釘やよく分からない小さな金具なんかも一応は拾っているけれど、二束三文にもなりはしないだろう。
仕方がないと諦めたリリーは、退廃特区にある換金所へと足を運んだ。
ここには公然の秘密的な、まだ使い道や再利用ができるゴミを買い取ってくれる業者がいる。
ゴミ拾いをする人が減らないどころか増え続けるのは、こうした業者がいることも一定程度は寄与していた。
「また嬢ちゃんか。毎日熱心なこった」
ひげもじゃで背が高くガタイのいい男が、カウンターにゴミの入ったカゴを乗せて見つめてくるリリーに言った。
一日に何人もの浮浪者がしかも不定期にやってくるので、男もいちいち顔を覚えちゃいない。
だが、毎日のようにやってくるだけでも珍しいのに、それが年端もいかぬ少女とくれば嫌でも記憶に残ってしまう。
交渉以外で男から声をかけるのもリリーだけであるのは、そうした背景があったりなかったりする。
リリーは男の言葉に何も返そうとはしない。声を出し、言葉を発することが父親に知られれば、殴られ、罵声が飛び、また失望される。リリーは昔言われた父の「しゃべるな」という言いつけをきちんと守っているのだ。
「まあいいや」
男は頭をぽりぽりと掻いて溜め息を吐くと、カゴの中のゴミを物色し始める。
布を広げてみたり、骨の本数を数えたり、何かよく分からない部品を指でつまんで眺めてみたりとすること数分。
「鉄貨五枚ってところだな」
カウンターに置かれた小さな円形の鉄製硬貨を見て、リリーは少し浮かない顔をした。
普段であれば十枚前後が見込めるのだが、その半分ではいくら硬貨の価値の分からないリリーでもがっかりはする。
「そんな顔すんなよ、これでも譲歩してんだぜ。最近じゃ規制も厳しくなってきてる。俺らも必死なのさ」
男の言い分の半分は本当のことである。しかし、譲歩しているというのは真っ赤な嘘だった。
実際のところ、物の価値も分からぬ輩相手の商売なので、ピンハネは当たり前であった。
リリーに対しても、普段から相場の約半分程度しか渡していない。
一応、それなりの金銭を持っていることが知られれば襲われる可能性を考慮して、という建前もある。
塵も積もれば山となる。毎日休まず換金しにきているリリーに相場通りの金を渡していれば、最悪、どこかで殺されていたことだろう。
まあそれは全て、今のところは杞憂に終わっているのでただの言い訳である。
リリーの稼いだ金は、父の酒代と腹を満たすためだけの安い芋に消えるのだ。例え稼ぎが今の倍になったところで、金なんて貯めている余裕はどこにもなかった。
「さっさと帰んな。次の客が待ってる」
言われるままに、リリーは手の平に収まる五枚の鉄貨を握りしめ、カゴを脇に抱えて、自宅へと帰っていった。
〇ストーリー要約
・拾ったゴミを換金した
・稼いだお金を握りしめて帰宅




