決まった練習試合の相手は?
「練習試合ねぇ〜」
「はい、公式戦の前に1度やっておいた方が良いかなと」
授業が終わって職員室に行き、僕は顧問の神坂先生へ練習試合をやるべきと提案。
東京の公式戦に出るつもりなら、今のうちに予定へ組み込んで行った方が良い。
試合の感覚があると無いじゃ相当違ってくるからね。
練習試合は互いの顧問、または監督の2人が了承しないと始まらない。
だから先生の協力は絶対に必要だ。
「ううん、まぁ受けてもらえそうな所をこっちで調べて申し込んでみるわ。マネージャーは小平君だけで忙しいでしょうし」
「ありがとうございます!」
難しい顔をされながらも引き受けてくれた事に、僕は心から感謝して頭を下げる。
練習試合に関して今は先生に任せて、僕は練習の手伝いへ向かう。
☆
女子サッカー部のフィールドは相変わらず状態が悪いけど、此処で練習するのが当たり前となってきている。
「ゴール前の直接FKの時って神兎君はどう蹴ってるの?」
FKの練習の為に、ゴール前へ他の部員と共にダミー人形を並べる僕へ、キッカーを努める咲月先輩は質問してきた。
「ううん、試合で任された事は無いですけど……右利きの僕ならイメージとしてはボールから5歩ぐらい下がって、そこから右足のインステップで壁を越えて狙うイメージですね」
相変わらず悲しい事に公式戦でキッカーを任されてないから、練習とイメージでしかないけどね。
とにかく実際にやってみせようと、僕はボールの前に立って自分で言った通り、後ろへ5歩下がる。
そこからステップを踏んで右足の甲でボールを捉え、ゴールを狙う。
目の前のダミー人形を上手く超えた後、無人のゴール右へと決まってネットが揺れ動く。
こういう事は陰でよくやってたから得意分野だ。
「おお〜! 綺麗に飛んだぁ〜!」
「あたし達インステップじゃなくインフロントでカーブかけてるけど、これ出来ないなぁ〜」
莉音先輩、花音先輩の2人が同時に感心する姿が見えた。
確かにカーブをかけるならインフロントは良いけど、僕の場合はパワーが無くてボールを速く飛ばせない。
なので補う為に力の伝わりやすい方法で蹴ってる。
これが最も自分にとってパワーが伝わり、スピードが出せるから。
「ねえー! 神兎君ー! 遠くから蹴る時はどう蹴ってるかお手本見せて〜!」
そこに守華先輩の声がして僕を呼んでいるから、そちらへと走って向かう。
莉音Side
キッカーという立場だから神兎君にキックを教わろうと、親しくなるつもりだったのに、あのアメリカ帰り女に邪魔されてしまう。
GKはパントキックとかスローイングの練習とか、キャッチ意外にも練習いっぱいあんだからね!?
本当なら前のダンス練習で差をつけるはずだったのに、よりによって咲月を除くライバル達の動きが良過ぎて結果、神兎君はダンスをこなした全員を凄いと思っちゃったみたい。
これじゃ効果薄いっての!
あ〜、それにしてもトタトタ走る神兎君可愛い〜♡
何回見ても良いし、いっそ抱き締めたいなぁ〜。
ジャージとか着込まないで、もっと薄着になって肌見せてほしいのに〜!
花音Side
多分莉音も同じような事を考えてると思う。
「ダンスで差をつけて神兎君に凄いと注目させて親しくなる大作戦」が見事失敗して、どうしようと揃って頭を抱えてるはず。
というか男女先輩に根暗先輩にアメリカ帰り女と、何かデカい女子ばっかり神兎君に寄ってってない!?
彼がそういうの好きなら、あたし達ちょっと不利だし。
最近カップ数上がったばっかで、そっちも平均の女子以上だと思うし全体的な女としての魅力なら負けてないはず。
それにしても遠くから見ても神兎君の可愛さは健在で良い、勿論間近で見る彼が最高に可愛いけど♡
あ〜、もっと神兎君の肌見たい〜。暑さでジャージ脱いでくれないかなぁ〜?
狼憐Side
不思議と分かる、彼に強く惹かれているのが俺を含めて5人だという事に。
同じ部にいた時は莉音、花音、月夜の3人が、そういうタイプが好きという事など全く聞かされなかった。
それに加えてあの守華……正直言えば彼女が最難関だろうと思ってる。
入部する時に神兎と来たらしいからな。
何より俺は守華に対決で負けてしまっている。
守護神としての株を上げたり、彼女のおかげで俺が入ったという事になってるし。
だが、まだ全員彼と出会って日が浅い状態で、大きな差はそこまで開いていないはずだ。
今神兎からキックの蹴り方を見てもらってる守華にも、さっきまでFKを見せてもらった莉音と花音の姉妹にも負けるつもりは無い。
……そういえば月夜の姿は何処だ?
あの女は何時もいるのかいないのか分かり難いから、今日も何処かにいるだろうが、まぁ良い。
月夜に関しては現時点だと未知数で、ダークホースといった所か。
それより練習試合が行われるなら俺はFWとして、プレーでアピールして惹き寄せるまでだ。
他の者が何処まで考えてるか知らんが神兎の為なら俺がプロになって養い、良い家庭を築く所まで考えている。
子供は2人以上確定として、そこは俺が色々頑張れば良い。
無論、家族を増やす為には神兎にも頑張ってもらうがな。
「皆ー、練習試合が決まったよー!」
皆でシュート練習を行なっている時、神坂先生が駆けつけてきた。
どうやら正式に練習試合が決まったらしい。
俺と神兎の将来の為に踏み台となる女達は何処の誰だ?
「強い所と戦う方が練習になると思って先生探したんだけど、受けてくれたの。円帝女学院に!」
学校名を聞いた瞬間、その場が凍りつく。
肩慣らしの練習試合どころではない。
高校の女子サッカー界に身を置いてれば、その名は自然と知る。
「あの〜すみません疎くて、どんなチームなんですか?」
つい最近までアメリカに居た守華は知らないだろうな。
彼女達が東京の頂点に輝く女王達で全国制覇の経験を持つ、高校女子サッカーの中でもトップクラスのチームだと。




