ダンスで体幹トレーニング
「ハイ! 皆もっとノリ良く動いてー!」
「まだまだこれからだからねー!」
今日の部員達はサッカーではなく、都内のダンススタジオにてダンスの練習。
此処では阿佐護姉妹の2人が先導して、コーチ役で踊っている。
何故こうなったのかは少し前まで振り返る──。
☆
「サッカーって足元の技術だけじゃなく体幹とかも大事だと思うんだよね」
大きなテーブルのあるミーティングルームで、選手達が次の練習について話し合っている時、莉音先輩から提案が出た。
体幹トレーニングについて何か考えでもあるのかな?
「どうせなら楽しく体幹トレーニングを皆でしてみない? あたしら実はサッカー部辞めてから、別の方で活動してんだよね」
そこに双子の花音先輩も加わり、2人揃って楽しげに笑みを浮かべている。
僕達は双子の姉妹の案内で、ある場所へと案内される。
動きやすいラフな私服で来るようにと言われて。
「此処って──ダンススタジオ?」
僕や部員の皆の前に広がる光景は、煌びやかなダンススタジオ。
姉妹の2人が居なかったら、多分ずっと訪れる事の無かった場所かもしれない。
「あたしら実はJTubeでダンス動画を投稿してて、昔からサッカーやりながらストリートダンスもやってんだよね」
「退部して時間空いたから何かやろうかってなったら、ダンス動画を暇つぶしにやれば結構バズってさー。双子のダンスユニットで活動してる縁で、此処のスタジオ使わせてもらってるんだ」
思わぬ有名人だった事に僕や一部の部員達は驚かされる。
僕はサッカー関連の動画ぐらいしか見て来なかったから、全然知らなかった。
「ああ、見た事あるな。息の合ったシンクロストリートダンスで、再生回数が相当行ってたと記憶してるぞ」
「……完全にサッカー辞めて……ダンスの道を進むのかと思った……」
狼憐先輩や月夜先輩と、多くの人が動画を見た事があるらしい。
そんな流行ってるんだ……。
「まずは初心者向けに最初やってくから、皆ついて来てねー!」
「準備は良い? 行くよー!」
莉音先輩と花音先輩の2人が前に立って、部員の皆は後ろから2人の姿が見れるように、ずらりと並び立つ。
ちなみに僕は隅っこで邪魔しない為に見学だ。
こういうダンススタジオに来た事ないし、実際にダンスを見るのも初めて。
そして2人が舞い始め、練習がスタートする。
「良い感じ! ノッて来たね皆ー!」
「リズム上げて行くよー!」
「き、きっつ……!?」
「ダンスってこんな疲れるの〜!?」
普段から踊ってそうな双子の姉妹は体力的にまだまだ余裕。
対して一部の部員の人達は疲労からか、動きが鈍ってるように見えた。
僕から見れば女子達が華麗に舞って綺麗な感じがするけど、見た目よりもずっとハードみたいだ。
「水泳も全身運動で体力使うって聞いてるし、ダンスも手足使ったり激しく動くから……同じ全身運動か……」
踊り慣れてる2人を除けば守華先輩、咲月先輩、狼憐先輩、月夜先輩がダンスについてきている。
ドリブルやパスといい、この6人が今回も特に優れてるのは偶然かな?
綺麗に皆が踊ってるし頑張ってるけど、僕としては揺れ動く豊かな物が目に入ってしまう。
守華先輩や狼憐先輩だけじゃなく、月夜先輩も結構おおきい……。
って邪な目で見たら失礼じゃん!? 駄目だよ僕……!
多分今の僕の顔は真っ赤だと思うけど気をまぎらわせる為に、僕はマネージャーとして飲み物やタオルの準備をしておく。
「はい、此処まで! 凄いなぁ、初めてでこんなついて来れるなんて!」
此処でダンスによる練習は終わり、結局最後まで踊り終えたのは6人だけで、皆の様子を見る限り相当ハードなのが分かる。
これは体幹トレーニングに加えてスタミナ強化にも繋がりそうだ。
「ふ〜、あたしアメリカで友達とダンス踊った経験あるからね。それよりハードだったけど」
「俺も格闘技をやってたから体力には自信があった」
「私はもう根性で乗り切ったよ!」
「……ダンス、完コピするぐらい見てたから……」
先輩達それぞれ色々やってたり、メンタルの強さもあったりと凄いなぁ。
「後は練習試合でどう発揮出来るか見てみたいけど……」
ふと僕が呟いた言葉に皆が反応する。
「練習試合? 時期的に良いねそれ、そろそろ1回ぐらいやってみたいよ!」
真っ先に咲月先輩が練習試合への意欲を見せていた。
「ん〜、でもつい最近まで廃部寸前で公式戦にも全然出てなかっただろうし、受けてくれる所あるのかな?」
「全部お断りとかされそう」
一部の部員達は練習試合を受けてくれなさそかと後ろ向き。
そうだ、こういう時こそマネージャーの出番!
練習試合の打ち合わせとか、そういうのは僕の仕事だから実現させないと!
「(あたしらのダンスで目立って、神兎君の注目を集めさせようとしたのに! そっから女として意識させたりとか!)」
「(こんな粘るなんて聞いてないし……! さっさと脱落してほしかったわ!)」
「(自分の得意分野で神兎君へアピールの魂胆は見えてんのよ双子女狐!)」
「(後輩の好きにはさせるか)」
「(……リードは……させない……)」
恋風女子サッカー部の要となる5人は個人が優れた力を持つも、相変わらず水面下では神兎を巡って激しく争う。
1人の男子を巡って5人が火花を散らす状態で、新体制となったチームとして初の練習試合が予定に組み込まれる。




