インターハイ東京予選決勝 恋風VS円帝2
円帝のゴール前に聳え立つような、強大な壁。
185cmと今日の出場選手で最も長身を誇るGK、大葉守李さん。
高校女子サッカー界のNo.1キーパーと言われる彼女が、恋風の勝利を阻んで来る。
まさに全国出場を前に最後の関門という感じだ。
この壁を破るのは容易じゃないだろうし、今年無失点の成績が既に証明していた。
けど僕達も無失点で来てるから、今回は何時も以上に1点が重くのしかかる試合になるかもしれない。
「もっと上がれぇ!! 強気が足りないぞ円帝ー!!」
大葉さん滅茶苦茶声が大きい!?
GKは指示を出したり味方を鼓舞したりするから、声を大きくした方が当然伝わりやすい。
この声は立派な武器だなぁ。
僕が考えてる間にプレーは始まり、大葉さんはスローイングでボランチに渡すと今度は左サイドの花梨さんへ繋ぐ。
さっきとは反対サイドからの攻めかなと思ったけど、右へのパスを出すと芹華さんがダイレクトで返した。
左の空いてるスペースへパスが出ると、ワンツーの形で花梨さんが向かう。
ゴール前のピンチにスタンドから歓声が沸いて来た。
ヤバい、上げて来るかな!?それとも直接ドリブルで中へ切り込んで来る!?
「切って!」
守華さんの声が響くと共に金森さんは無理に飛び込まず、花梨さんがドリブルで仕掛けてきそうなコースを塞ぐ。
クロスを上げられるよりも、エリアへ侵入される方が守備にとっては大きなリスクとなってしまう。
一歩間違えたら最悪、ファールでPKを取られる恐れがあるからだ。
侵入は諦めたのか、花梨さんは低いクロスを上げて来る。
「っ!」
「おわぁっ!?」
護才さんが飛び込んできたけど、月夜先輩が先に蹴り出してクリア。
相変わらず危険察知能力が高くて簡単にはシュートを許さない。
恋風ゴール前でボールが転がっていくと、芹華さんは反応して追いかける。
危ないとなったけど真理華さんが先に取って、姉妹によるセカンド争いを制した。
「その調子ー! 恋風守備陣ー!」
DFが頑張って円帝の攻撃を止めてくれたから、僕は守備陣の皆へ精一杯の声を上げる。
月夜Side
ああ……神兎君からの声援が聞こえる……!
この天使の声が私に無限の力を与え、いかなる敵も通さない……!
相手が円帝でも負ける気が正直しないし……何より神兎君から応援されたら勝つしかないから……!
とりあえず守ったから攻撃陣には頑張ってほしいけど……ただ相手は全国トップレベルで鉄壁……。
いかに狼憐や姉妹達が優れてるからって、ゴールは簡単しまゃない……。
私の方も簡単に得点はあげないけど……。
『恋風、守神真理華から左の花音へ! 速い展開だ!』
真理華のパスは正確にして速い……おそらく部の誰よりも上手いも思う……。
悔しいけど……。
その証拠に向こうの自慢の守備もカットが間に合ってないし……花音に通って左からチャンスが生まれそう……。
「切れぇ!!」
向こうのGKが声大き過ぎて離れてる私の位置からも声は聞こえるんだけど……あれ、側のDFの鼓膜破れたりしない……?
それでDFライン崩れないから、彼女達は多分聞き慣れてるのかもね……。
燐火Side
滅茶苦茶うるせぇぇぇ!!
守李のバカでっけぇ声には毎回悩まされてばっかだし、マジで耳栓つけて試合出る事を考えちまう!
てめぇのせいで神兎の可愛い声が聞けなくなっちまったらどうしてくれんだよ!?
そうなったらマジでシメてやるからな!!
「くっ!?」
ゴール前にボールが上がると恋風の銀髪デカ女が懲りもせず飛んでくるけど、それを上回る女こと守李がボールをキャッチした。
付き合い長いけど守李がハイボールで負けてる所なんか1度も見た事が無ぇし、勿論あたしも悔しいけど勝てねぇ。
手足が長くて反応も良いから隙らしい隙が無くて、ゴールを奪うのは至難の業って言われてる。
「カウンター!!」
うおっ!?急に叫ぶんじゃねぇよバカ!
近くで守るあたしからすれば滅茶苦茶聞こえるし、観客が多く埋まった状態のスタンドでも余裕で聞こえた。
守李のスローイングから芹華へ渡り、あいつを中心に華麗な攻撃が奏でられる。
寄せて来る相手を華麗なターンで躱し、右の蜜柑に渡すとダイレクトでパスが返ってきてワンツーの中央突破。
芹華の本領発揮だ。
『守神芹華が止まらない! ワンツーからのダイレクトシュート! 恋風のGK大花がキャッチだ!』
『良いキャッチングですね。大葉にも負けてませんし、無失点GK同士の試合は引き締まりますね!』
芹華が得意としていたワンツーの右足ダイレクトシュートだったけど、相手のGKに取られちまう。
以前にうちの2軍を完封した時といい、相変わらず厄介な壁として立ち塞がる気だ。
けど1点、それさえ取っちまえば勝てる。
あたしが守ってるし全力の円帝がゴールされるなんてあり得ねぇから。
とりあえず、雑魚女達はさっさとブッ潰して神兎と早く……!
待ってろよ神兎!!
優勝決めてすぐ、お前を連れ出してやるからな!




