緊張のお泊り!?
「突然の雨で大変だったのですね小平君、予期しない形だけど守神家へようこそ」
「え、ええと……急にお邪魔してすみません……」
僕は今、豪華な内装のリビングらしき場所に居て、そこのテーブルに叶監督、芹華さん、そして真理華さんの姿が見えた。
そこで僕は同じテーブルを囲み、夕飯をご馳走してもらう事となる。
芹華さんと入浴の時とか思い出すだけで恥ずかしくて、2人にはとても言えないけど……!
「小平君が姉様と共に雨に濡れて帰って来たと聞いた時、正直驚きました」
「急な強い雨が来たんでな。風邪を引かせたくないと必死だったし、家が近いから雨宿りさせようと思ったまでだ」
芹華さんは何時も通り凛々しく話していた。
この人の……僕、見ちゃったんだ……。
ヤバいヤバい、思い出すな……!
「先程外を見たけど凄い雨だったし、天気予報では今夜は止みそうに無いみたいだから今日は我が家で泊まって行ってはどうかしら? 服も乾いていないままでは帰れないでしょうし」
「え!?」
叶監督からの提案に僕は思わず声を上げてしまう。僕が今着ている服は青い男物のパジャマで、多分叶監督の夫……2人のお父さんの物かな。
サイズが全然合わないから捲ったりして調整してるけど、結構ブカブカだ。
下とか抑えてないと落ちてくるから立って歩く時は気をつけないといけない。
「それが良いです。小平君は我が部の大事なマネージャー、雨の中で帰らせて風邪を引いて欠いたら大いに困ります」
真理華さんが僕を相当重要そうに言うけど、そうなのかな……?
「こんな雨の中で帰らせるのは守神家の礼儀に欠いたもの、ですよね母様?」
「ええ、それはあってはなりません。小平君、不自由はあるかと思いますが今夜は此処でお泊りください」
「は、はい……お世話になります……」
結局押し切られるように僕は守神家で一泊していく事が確定。
その後でメイドさんの手で運ばれて来た料理を一緒に食べる。
前菜のサラダとか、メインのビーフシチューにライスと、デザートにフルーツゼリーを出され、お洒落なレストランにでも来たような感覚。
緊張してたけど味は凄く美味しかった。
芹華Side
私と彼の仲は今日で相当進んだと思う。
2人きりでサッカーを行っただけに留まらず、屋敷に招待して共に入浴までしてきた。
これはもう許嫁レベルと言って良いんじゃないのか?
しかし彼の白い肌を前にした時、私の理性は保てていなかったかもしれない。
あれは……綺麗で尊いな。
「(姉様……ズルい)」
近くの席なので真理華の呟く言葉は、かろうじて聞こえた。
お前は普段から恋風で小平君と多く接する機会が多くあるだろう。
こちらは他校だから早々には会えんのだぞ?
恋愛は先制がサッカー以上に大事と知らん真理華の経験不足だ。
「(私だって小平君とお風呂……背中流したりしたかった……)」
すまんな、それは私が全て先にさせてもらったよ。
そして私は此処でも攻める、彼の眠る部屋については私の部屋で眠るようにと。
彼は可愛らしくフルーツゼリーを美味しく味わっている所で、私は彼へ提案する。
「小平君、今夜眠る部屋についてだが私と──」
「小平君、休む部屋は私の所にさせてね。他に部屋が此処ぐらいしか空いてないので」
私の提案を遮るように母様が小平君に提案した時、一瞬何を言ってるのか理解出来なかった。
私でも真理華でもなく小平君が母様と?
「母様、私の部屋でも……」
「いけません、貴女達2人と彼は高校生です。そこで一緒の部屋にする訳にはいきませんし、他に眠れる部屋が空いていないのも事実。彼を保護している今、私が代表として面倒を見る義務があります」
真理華の意見は即却下されてしまう。
既に私と彼は共に入浴までしているのだが、それも関係なく母様は自分と同じ部屋にしようとしていた。
「……」
冷静に見えるが納得いかない真理華の雰囲気は、姉妹として長い付き合いだから何となく分かる。
だが、母様の決定は絶対だ。
それは真理華も私達もよく分かってるし、保護者としての責任があるのも事実。
母様から彼との仲を応援はされているが、まだその段階ではないと無理にでも理解し、私は引き下がる。
そうでなければ私と小平君は同じベッドで眠れたのに……!
神兎Side
僕は今、叶監督の部屋に招待されてて緊張している。
てっきり1人で狭い部屋で寝るつもりだったのが、テレビで見たようなホテルのスイートルームぐらい、広々として煌びやかな内装の部屋に泊まる。
そして目の前にはキングサイズと言うべきなのか、それぐらい大きなベッドが1つ置かれていた。
「あ、あの……叶監督。お父さんとかは……?」
叶監督には娘2人がいる、それなら愛する夫もいるはずだけど屋敷に来てから1度も姿を見せていない。
「夫──あの子達の父親は既に亡くなっているわ」
「え……!」
まさかの言葉に僕は言葉を失う。
「病気でね、それからはあの子達に不自由をさせまいと私は働いてきたの」
その想いが此処までの屋敷を築き上げたんだ、凄い……。
って今僕が着てるのって大事な遺品じゃん!?
「そ、そんな大事なのを僕が……すみません……!」
「良いの、男物は夫のしか無かったし夫も着てもらって嬉しいと思うから」
僕が頭を下げて謝ると叶監督は優しく微笑んでいた。
まるで女神を思わせる美しさで胸がドキッとなってしまう。
「さ、早く休みましょうか。明日には服も乾いてるはずだから」
「は、はい。じゃあ僕はこっちで……」
僕は座り心地の良さそうなソファーの方へ向かい、1人で寝ようとしていた。
「まあ、駄目よ? ちゃんとベッドで寝ないと疲れって取れないんだから」
「いや、でもベッドは叶監督が……」
「これだけ大きいベッドなんだから小平君が加わっても余裕で眠れるわ。一緒に寝ましょう?」
「え……ええ……!?」
まさかの叶監督と同じベッドで眠るなんて、全然思っていなかった事に僕は戸惑ってしまう。
「……私みたいなオバさんじゃ嫌で不満かしら?」
「! い、嫌じゃないです! オバさんなんてとんでもない、叶監督は綺麗な女性で凄く美人のお姉さんですし、むしろ嬉しいです!」
嫌がってると思われて僕は気づけば必死に、そんな事は絶対無いと本人へ伝えていた。
実際に2人の高校生の娘がいるとは思えない程、美しくて若々しい。
正直凄く魅力的な女性だ。
「まあ、嬉しいわ小平君。じゃあ一緒に寝ましょうね♡」
嬉しそうに微笑む監督と一緒に結局眠る事となった。
「……」
落ち着かない。
今の僕は大きなベッドの中に入っていて、寝心地は凄く良い。
でも、すぐ隣には叶監督が居て眠れる気がしなかった。
「……眠れない?」
「! 正直……はい……」
「そうよね、元々の家とは環境が全然違うと思うし落ち着かないのは当然……」
すると僕の体は急に引き寄せられたかと思えば、ふわっと優しく包みこまれる。
ポフッ
「!?」
僕は今、叶監督に抱き締められて顔が大きくて柔らかい物に覆われた。
服からは分かり難かったけど、かなり大きい。
「よしよ〜し、いっぱい甘えてお休みなさい〜♪ママと思って良いからね〜♪」
優しい声で言われて頭を撫でられると共に背中も優しくさすられ、凄く心地良くなってしまう。
甘くて良い匂いがしたり、どんどん眠気が襲って来て頭もぼ〜っとする。
段々僕は此処から抜け出したくない、そう強く思っていた。
「……ママ……」
僕の意識は手放される。
叶Side
男の子の服が無かったから夫のパジャマを用意したけど、ブカブカで可愛い。
ズボンが落ちないように一生懸命押さえながら歩いたりと、神兎君の1つ1つの仕草が愛しく思える。
何より今、私の事をママって言って私の腕の中でスヤスヤ眠るこの子が愛らし過ぎて堪らない!
ああ、こんな息子が欲しいわ……♡
いいえ、絶対に欲しい……!
息子が生まれてたら、こういう感じだったかもしれないし、このまま本当の息子にしてしまいたいわ……♡




