満員電車デート
「そろそろ8時か……」
僕は家で今日何度目なのか分からない、時計で時間のチェックをしていた。
昨日の電話では守華先輩は朝の8時に家へ迎えに来るとの事で、僕は7時前に起きて顔を洗って着替えたり、朝食のパンを食べたりして出かける準備に備える。
宿題は終わらせたし、後は格好大丈夫かな?
鏡の前に立つと白い半袖のパーカーと青いシャツ、黒のハーフパンツを身に着けた僕自身が映る。
とりあえず自分なりのオシャレをした結果がこれだけど、ダサいとかなったらどうしよう……?
ピンポーン
家のインターホンが鳴って、僕はモニターを覗く。
そこには守華先輩の姿が見えたので、すぐに鍵を開けてドアを開いた。
「や、神兎君おはようー♪」
明るい笑顔で朝の挨拶をしてくれる守華先輩は、青い長袖のジャケットに同色のシャツを中に着ていて、下は黒いショートパンツという格好。
遊びに行く時の服装は学校の時と違った魅力が感じられる。
「おはようございます、守華先輩。遊びに誘ってくれた上にわざわざ迎えに来てくれてありがとうごさいます」
「んー、固いかなぁ〜」
「え?」
僕が守華先輩に頭を下げて挨拶をした時、顔を上げると目の前の先輩は困ったような笑みを見せていた。
何か悪い事やったかな?
「遊びに行く2人なのに滅茶苦茶距離ある感じの他人みたいなのはなぁ〜、ほら。泊まったりしたから知らない仲じゃないよね?」
「えっと……どういう事でしょうか?」
「だから、もうちょっと先輩後輩とか無しにしてフレンドリーに行こうって事!」
それはつまり僕が守華先輩を呼び捨てで呼んだりタメ口!?
流石に先輩相手にハードル高いって……!
「ええと……」
先輩とか年上には当たり前のように敬語で話してきたから、今更それ無しは話しづらい。
「じゃあ……守華さんで……」
「んー、まぁ先輩抜けたのは一歩前進って事にしとこう」
いきなり呼び捨てで接するのは僕には難しかった。
守華さんって呼ぶのが今の精一杯だ。
「とにかく時間勿体ないから、さぁ行こうー♪」
「は、はい」
女性を持たせる訳にはいかないので僕は手早く出かける準備を済ませると、家の戸締まりをしっかりしてから守華先輩と共にマンションの外へ出る。
朝の8時で休みの日なせいか人の通る姿はあまり多くなくて、犬の散歩をさせている人やジョギングしている人を見るぐらいだ。
「そうだ。今日は電車乗って違う町にでも行ってみよっかぁ?」
恋風町で遊ぶのかと考えていた僕だけど、守華……さんは違う町へ遊びに行こうと提案する。
そういえば電車で移動して遊びに行くのって何時以来になるのか、そういうのを覚えてない程に遠ざかっていた。
「行ってみたいです……守華さん」
「よろしい、行こうかー♪」
「わっ……!?」
まださん付けへの変更に慣れないまま、僕は守華さんと手を繋いで引っ張られる。
やっぱりこれ……デートっぽい!?
☆
僕と守華さんで恋風の駅前にやってくると、さっきまで一通り少なかったのが嘘みたいに人の波が出来ていた。
やっぱり駅前まで来ると人は多くなってくるなぁ。
「ん〜、何処まで行こう……?」
守華さんは行き先を特に考えていなかったみたいで、駅にある路線図を見て考えてる。
僕も何処が良いのか見ておこうかな。
「よし、決まった! 行こう神兎君ー」
少し考えていた守華さんだけど目的地をすぐ決めたみたいで、僕達は駅のホームに移動してから電車を待つ。
やがて電車が来て僕達は電車に乗り込むと、電車の中は思ったより人が多くて混んでいた。
というか女性専用車両に乗ったのかって思うぐらい、周囲に女の人が多い!?
「神兎君、ドア付近に居よっか」
「あ、はい……!」
体の小さい僕が人混みで埋まりそうだったせいか、僕は電車のドアを背にして守華さんが前に立つ。
何時もはゴールマウスを守ってるけど、今日は僕を守るかのように。
本当だったら男がやらないといけないはずが、僕の体でこうなって情けないなぁ……。
というか目の前に青いシャツの胸辺りが大きく膨らんでる方に目が行きそう……!!
僕は違う方を見ようとする──。
「わわっ」
その時、電車が激しく揺れて守華さんが僕に迫ってきた。
ぱふっ
「むぅっ!?」
僕は守華先輩に押し込まれると、シャツ越しで大きな胸の中に埋もれてしまう。
覚えのある甘い香りと柔らかさに包み込まれ、僕の胸は高鳴って顔も熱くなる。
あうう、頭がクラクラしてくるよぉ……!
守華Side
ああ〜、神兎君の私服可愛いわぁ〜♡パーカーで半袖、短パンで生足を出したりと目の保養になる〜♡
その彼が私の胸の中に埋もれて顔を真っ赤にさせて、まさに可愛さ爆発状態ー!
ちょ、この満員電車の状況は美味し過ぎない?
最初は周囲の女達が神兎君へ寄って来る事に、滅茶苦茶イラッとなったけど今は最高の環境になってる。
いっそこのまま目的地に着かないでほしい〜、終点まで乗っちゃおうかなぁ〜?
あたしは可愛い神兎君を胸に抱き続け、この極上な時間を噛み締めていた。




