無礼な者達に静かなる女子が立ち上がる
3回戦は僕達、恋風が旗本高校に3ー0で勝って大会は準々決勝へと駒を進める。
「女子サッカー結構凄くない?」
「準々決勝まで大差だよな」
「ひょっとして結構良い所行けそうじゃないか?」
僕が校内を歩いている時、学生達が皆の試合について語ってるのが耳に届く。
初戦を勝った時より話は広がってきて、恋風女子サッカー部への期待が大きくなっていた。
「これ、ひょっとしたらインターハイは男子サッカー部と揃って行けるんじゃね?」
「けど男子の方は次、東京王者の桜王学園と当たるから厳しそうかも」
男子サッカー部の方も順調に勝ち進んでいるみたいで、僕達も負けてられないね。
「お、マネージャー頑張れよー」
「女子の足引っ張らないようになー」
「迷子なんなよー」
「あ、ありがとう……」
エールやからかいみたいなのが混じりながらも、僕はお礼を言って返す。
迷子って僕はいくつに思われてるんだ……。
とりあえず購買部に行こう、今日は何を買おうかな?
☆
結局、安定のあんぱんとチキンサンドを購入して何時もと変わらない僕の昼食。
それをお供に校舎の外へ出て来た。
「ん?」
何処で食べようか、周囲を見回していた時に僕の前にある茂みが揺れた気がする。
誰か居るのかと気になって、近づいてみると長い黒髪の女子が座り込んでいるのが見えた。
見間違いようがない、月夜先輩だ。
「あの、月夜先輩……何してるんですか?」
「……気配を消す特訓を兼ねてお昼の場所を探してた……神兎君に見つかったから、私の負け……」
「そ、そうなんです……?」
僕は何時の間にか月夜先輩のかくれんぼの鬼にでもなってたのか。
見てみれば彼女の手にはお弁当箱らしき物を持っていて、彼女もお昼に食べる場所を探しているみたい。
「あの、僕もお昼にしようと場所を探してるんですけど良ければ一緒に行きませんか?」
「……行く……!」
僕がお昼に誘うと月夜先輩の雰囲気が少し明るくなったような気がする。
DFの要で頼れて、何処かミステリアスで他の女子には無い独特な雰囲気漂う女子だ。
さて、何処かに良い場所は無いのかな──。
「よお、何時かの入部希望者じゃねぇの」
聞き覚えあるような男子の声が聞こえて僕が振り向くと、そこには僕を追い出したサッカー部の男子部員達が立っていた。
「あ……どうも」
彼らは先輩なので僕は姿を見ると、頭を下げて挨拶。
「ホント驚いたぜ。男子サッカー部に入れないとなって、マジで女子サッカー部に行きやがるなんてな」
「まさか冗談で言ったのを本気にして行くって、どんだけサッカーやりたかったんだよ」
男子サッカー部の先輩達はニヤニヤと何処か馬鹿にするように笑っていた。
「そりゃ、こんだけチビなんだ。遊んでもらう相手は女子ぐらいしかいねぇだろ」
長身の先輩から僕は頭をポンポンと軽く叩かれる。
頭を触られるのは女子達がよくやってくるけど、彼女達と違って彼らに触られるのは嫌な気分だ。
優しさも感じられないし。
「……」
「うお!?何時から居たんだよ、この女は? ビックリさせやがる……」
今になって彼らを見る月夜先輩に気づき、彼らの内の1人が驚いていた。
「不気味な女だな。けど、お前には目立たないような女がお似合いだろうよ」
「流石にそんなオカルトっぽいデカ女は俺にゃ無理だなぁ〜。チビに丁度良い相手だ!」
月夜先輩を馬鹿にするような彼らに、僕は強い怒りを覚える。
僕が言われるのはともかく同じ部のチームメイトが悪く言われる事は許せない。
「……謝ってください」
「は?」
先輩の1人が見下ろして睨んで来るけど、怖さより怒りの方が勝ってるせいか、今日の僕は口を止めなかった。
「月夜先輩に対して今のは失礼です! ちゃんと謝ってください!」
「!」
それを言った瞬間、僕の首元に太く長い腕が伸びてきた。
ガッ
「クソガキぃ!」
「っ!?」
僕の首を片手で絞めると、そのまま僕の体は首を絞められたまま吊り上がっていく。
「てめぇ、1年のチビ雑魚の分際でデケェ口を叩きやがって……きついお仕置きが必要らしいなぁ?」
「女子にくっついてるだけの金魚のフンが調子乗り過ぎだろ」
「調子良く勝ち進んでるのがてめぇの力と勘違いしてよぉ、おめでたい馬鹿なガキだぜ」
「あ……う……!」
凄い力で首を絞めてきて苦しい……!
体格差で全然敵わないのに、でも僕は黙ってられなかった。
両手で引き剥がそうとしても僕の力じゃ全然ビクともしない。
サッカーだけじゃなく、それ以外でもフィジカルの差で泣くなんて……!
「……ねぇ……離して……?」
すると、僕の耳に月夜先輩の声が微かに聞こえてくる。
ガッ
「何だこの女? はな……!?」
ドサッ
「ごほっ……!」
突然、僕を掴んでいた腕の力が緩んだかと思えば、手が離れて僕は地面に落下して咳き込む。
月夜Side
同じサッカーをやってる者として吐き気がする程、最低な人達……。
以前の監督と同じ感じで忌々しい……。
それだけならまだしも、よりによって神兎君を侮辱したり暴力まで振るって私の怒りは頂点に達した……!
「な、何だこの女!? 離せ……!」
「……誰がチビ雑魚……? 神兎君の何処を見て雑魚と言いきる……? 何も知らない分際で……!」
天使を傷つける愚か者は誰が相手でも許さない……許せない……!!
ギリギリッ
「な、何だこの力……! 女子だろこいつ……!?」
「や、や、やべぇって! この女の目とかマジでヤバそうだぞ!」
「ひぃぃ!? 俺知らねぇ……!!」
「お、おい! 馬鹿! 置いてくんじゃねぇよ! いてっ!?」
仲間達は恐れをなして助けに行く事もなく逃げ、私が捕まえていた男子は逃げたがってたからパッと離す……。
急に離れたから勢い余って地面に転びながら逃げたけど……知ったことじゃない……今は神兎君第一……!
「神兎君……大丈夫……!?」
「は、はい……。ありがとうございます……」
神兎君は首を絞められてたし、地面に落ちて怪我をしたかもしれない……。
一刻も早く保健室に運ばないと……!
「わっ!?」
私は彼を背負って保健室に向かう事にした……。
神兎君の体は軽くて簡単に運んで歩ける……背中で感じる体温や鼓動が私を幸福へと導いていく……!
でも、あの男達を許す気は無い……憎い……憎い……呪う……呪ってやる……!




