快進撃が知れ渡る時
「いよーし!!」
咲月先輩のミドルレンジからのシュートが決まって、これで3ー0。
後半に入って追加点が入り、危ないシーンは特に無くて恋風ペースで試合が進んでいた。
キャプテンの咲月先輩が上手く皆を引っ張り、前線では狼憐先輩と莉音先輩、花音先輩の双子を中心に暴れ回る。
守備は高さがある上に神出鬼没な月夜先輩が相手の攻撃を潰し、守華先輩のコーチングで的確に指示を与えたり、時には盛り上げたりと見えない所でチームを支えていく。
かなり攻守が噛み合ったレベルの高いサッカーで、皆のキックによる精度も最初の頃より増している。
日々のダンス特訓なのか、グラウンド整備なのか、それとも僕がキックを教えたからなのか分かんないけど……とにかく皆成長しているのは確実だ。
「皆がこんな凄かったって──実はとんでもない才能を元々持ってたのが開花したとか?」
「そうなんでしょうか……?」
ベンチに座る神坂先生の何気ない疑問に僕は考える。
サッカーの育成ゲームで爆発的な成長を遂げた、とかなって選手の能力がグンと伸びるのは見た事あるけど、流石にゲームと現実も同じとは思っていない。
そんな現実離れのレベルアップを恋風の皆が出来たとしたら、凄い事だとしか言えないよ……!
「狼憐の姉御、流石ー!」
考えていたらフィールドの方に動きがあったみたいで、狼憐先輩が4点目となるゴールを決めていた。
「頼れるねー! 狼憐の姐さんー!」
守華先輩が大きな声でゴールを称え、チームワークも良い。
流れは完全に恋風ペースだ。
☆
芹華Side
我が円帝女学院はシード扱いで、2回戦からの登場となる。
東京の頂点に立つ者としては此処で負けられない、獅子は兎を狩る時も全力を尽くすと言うからな。
手抜きなどしない。
15ー0
「容赦無いなぁ〜……」
「サッカーのスコアじゃねぇってこれ」
「男子サッカーで言えば女子バージョンの八重葉学園じゃね?」
周囲はざわつくが100%ではない。
全力を尽くした結果だが完璧ではなかった。
途中のミスが無ければ後2、3点取れていた可能性があっただろう。
「はぁ〜、雑魚過ぎて眠くなっちまうわぁ〜」
私の隣で欠伸をする2軍だった燐火は何故か1軍入りを果たす。
まさか短期間で、この品のない女が私と同じ所まで上がってきたのは正直驚かされる。
母様には何か狙いがあるのだろうか?
「お、見ろよ芹華」
ロッカールームで着替えをしていた時、その燐火は私にスマホの画面を見せてきた。
「何だ? またくだらんページでも見つけたのか」
「そんなんじゃねぇよ! ちゃんと見ろって」
しつこく見せてくるものだから、見れば早いだろうと私は彼女のスマホに目を向ける。
「これは──」
「お前も興味あんだろ?」
表示されていたのは女子サッカーのインターハイ東京予選、そのページで恋風の試合結果が表示されていた。
5ー0で恋風が2回戦を勝って3回戦へと駒を進めている。
学校名を見た時、私の心には真っ先に青い髪の愛らしい彼の姿が浮かぶ。
「あたしらを1回負かしてるから、むしろこれくらいやってもらわなきゃ困るけどなぁ。お、あの銀髪デカ女2連続ハットトリックかよ? やるじゃねぇの」
試合結果を見ながら言う燐火の言葉は特にどうでも良い。
調べてみれば1回戦も新鋭校を相手に完勝と、高い実力を見せたようだ。
あのアメリカ名門クラブにいた凄腕のGKがいるとはいえ、たったそれだけで近年全く成果を上げていない恋風が、此処まで化けるのか?
……もしくはあの少年が影響しているとか、まさかな。
確かに彼がマネージャーで何時も側に居てくれると、凄く力となるかもしれない。
私なら確実に張り切るし、彼と過ごせるのならば無限に頑張れそうな気がする。
……こういう事を前の私は考えなかっただろうが、あの小平神兎という少年に会ってから、私の心は彼を想うだけで激しく荒ぶってしまう。
恋風がこのまま勝ち上がって我々、円帝も勝って再びフィールドで対峙する時、彼にも再び会える。
そう思うだけで私の胸は高鳴ってきた。
「おいー、言っとくけどよ……。あいつ、神兎を食うのはあたしだぜ?」
「は?」
燐火、いよいよこの私に本気で喧嘩を売りに来たか?
貴様に小平君は渡せんぞ。
悪い影響が及んだら、どうしてくれるつもりだ。
「私も言っておくが、それはサッカー以上に譲る気は無い」
私も退くつもりなど全く無い。
彼は誰にも渡さん……その為には我々が勝つだけでなく、恋風にも絶対に勝ち上がってもらわなければ困る。
恋風5ー0錦村
狼憐3
莉音1
咲月1
マン・オブ・ザ・マッチ
阿佐護莉音




