彼の家を訪れた者は?
「皆さんお疲れ様です!」
今日も部活を終えた選手達へ、僕はタオルや飲み物を配ったり練習道具を片付けたりした。
僕は1人でやるつもりだったんだけど、選手の皆が率先して手伝ってくれてる。
特に5人(守華、阿佐護姉妹、狼憐、月夜)が真っ先に来たりと。
「神兎君もお疲れ様! 何時も頑張ってるねー♪」
守華先輩から笑顔で頭を撫でられて嬉しいと思いながらも、子供扱いされてる感じで少し恥ずかしい。
「そっちは重い。俺が運んでおこう」
「あ、ありがとうございます……!」
狼憐先輩は重い道具を軽々と持ち上げ、僕よりも早く片付けてくれた。
男としては情けないけど……。
「ねぇ、神兎君……」
守華先輩が離れた直後、莉音先輩と花音先輩が同時に近寄って来ると、何故か声を潜めて話す。
「あたし達、趣味で料理作ったりしてるんだけどさ……それがちょっと余ってるから、神兎君の家へ持ってって一緒に夕飯食べない?」
「2人だけじゃ食べ切れない量を間違って作っちゃって、助けると思ってお願い……!」
僕の家へ料理を届けに来てくれると聞けば、2人が食べていた美味しそうなお弁当が思い浮かぶ。
「ええと、じゃあ……お願い出来ますか? 場所の方は後でスマホの方に送りますから」
「「オッケ〜♪」」
何処までも息ピッタリな双子の先輩は揃って返事をする。
☆
東京、恋風町にある僕の家は10階建てマンションの9階。
共働きの親のおかげで良い家に暮らせて、今は2人とも働きに出てるから僕1人だけだ。
小型の掃除機が起動する音だけが聞こえ、家を掃除してくれてる間に僕も部屋を片付けておく。
やっぱり女子が来るとなれば、汚い部屋は見せられないし。
……あれ、そもそも男子の部屋に女子が上がりこむってどうなんだろ……?
いや、何もないし何もしないから!変な考えは止めとこう!2人は善意で届けてくれるのに失礼だよ!
ふう……落ち着こう、深呼吸してと──。
ピンポーン
来た、おそらくドアを開けたら莉音先輩と花音先輩の2人が立ってるはず。
僕は2人が居る事を想像しながら玄関に近づいて鍵を開ける。
「いらっしゃ──」
そう言いかけた時、僕は固まる。
「「ごめん神兎君〜」」
私服姿で、お裾分けの料理を両手で抱える双子が僕の正面に立っていた。
「こんばんは〜♪」
「邪魔するぞ」
「……こんばんは……」
双子だけでなく守華先輩、狼憐先輩、月夜先輩も居て5人が僕の家の前に立っていた。
「ええと……よ、ようこそ……?」
戸惑いながらも家の前に立たせっぱなしには出来ないので、僕は5人を家へ招き入れる。
「おお〜、結構広くて良い部屋に住んでるんだね神兎君って!」
「確かに良い部屋だな」
玄関を上がって入っていった守華先輩と狼憐先輩は辺りを見回す。
僕にとっては見慣れた部屋だけど、他の人からは良い部屋って見えるんだなぁ。
「それで、あの……どうして皆さんが?」
「ああ、それはね〜」
莉音先輩の話は少し前まで振り返る──。
☆
「此処が神兎君の家かぁ〜」
「結構良いマンションだよねー。小平家ってもしかしてお金持ちだったりするのかな?」
双子の姉妹は神兎から教えられた10階建てマンションの前に来て、その場所を見上げていた。
「ご飯は食べるけど1番のメインディッシュは……ね?」
「うん……楽しみ♪」
莉音、花音の2人は肉食獣と化しており、部屋で待つ愛らしい草食動物な彼の元へ向かう。
「ちょい待ちー」
「ん……!?」
「は……!?」
双子が肩を叩かれて同時に振り返ると、シンクロするように2人は同時に固まっていた。
聞き覚えある声、そんなはずはと思いながらも振り返ると思った通りの顔が見える。
同じサッカー部の守華が何故か立っていて、側には狼憐と月夜の2人の姿もあった。
長身の3人が並んで立つ姿は中々の迫力で、それぞれが禍々しいオーラを纏う。
「何であんたらが此処に……!?」
「コソコソしてて怪しいと思い、そこで月夜から聞いた。神兎は親が共働きで1人暮らしをしている状態だとな」
「!? まさか、神兎君とのお昼での会話、月夜先輩聞いてたたの!?」
あの場には神兎と自分達だけかと思って甘い時間を過ごしたつもりが、月夜の存在には全く気づいていなかったらしい。
「私は神兎君だけ見てたから……そこに双子がたまたま入ってきて、たまたま聞いただけ……2人に食われるぐらいなら言った方がマシ……」
月夜は神兎だけを見るウォッチングをずっとしていて、双子の会話はたまたま入っただけに過ぎず。
そこで神兎の家事情について聞くと、部活での様子と合わせてライバル達に伝えた。
本来なら自分だけが知って独り占めしたい、という想いはあったが。
「隠れて2人がかりで神兎君を無茶苦茶してやろうったって、そうはいかないからねー」
「胃袋を掴んで、それで惹かれさせようという狙いもあったっぽいな」
「何よー! そっちだって神兎君の事可愛くて可愛くてたまんないなら、部屋行っちゃうでしょ!?」
姉妹の好きにはさせず、立ち塞がった守華と狼憐に花音は逆ギレするような感じで怒る。
「そりゃ行くでしょ」
「むしろ行かない方がおかしい」
「……プライベートなあの子を拝めるなら……見たい……」
3人とも否定は一切無く、自分達も同じ立場なら行くと言い切っていた。
「あの、とりあえず行っちゃう? あたしら目立ちそうだしさ」
此処で女子5人が言い合う姿は相当目立ち、それが神兎の知り合いと分かれば彼に悪い噂が立って迷惑になるかもしれない。
5人は一時休戦して共に神兎の待つ部屋へ向かう。
こうして彼を狙う、異常な愛に満ちた5人の女子達は揃って彼の元へ訪れていた。




