2人きりな個人練習
カラオケでの集まりから翌日、日曜の朝から僕は恋風町にある大きな公園へ来ていた。
「少し今日は気温高いかな……半袖で良かった」
僕も練習で動く事を想定して、まだ4月だけど半袖の白いシャツとハーフパンツの動きやすい服装にしている。
今日は日が出て暖かいからね。
休日だからか、小さな子供を連れたお父さんお母さんらしき人達が、ブランコとか滑り台で遊ぶ姿が見える。
こういう光景は、ほっこりして微笑ましい。
僕が待ってる間に持って来たボールでリフティングをしていると──。
「神兎、待たせて悪い!」
そこへ声がして振り返ると、狼憐先輩が黒いノースリーブのシャツと同色のショートパンツの格好で登場。
練習で体を動かすから暑くなるだろうけど、薄着な狼憐先輩の姿に僕の顔は熱くなってしまう。
長身の長い脚が見えててシャツも結構胸元が空いてるし……!
いや、練習するだけだから!向こうが貴重な休みの日に僕を誘って練習しようとしてるのに、僕は何を考えてるんだよ!?
「どうした神兎?」
「い、いえ。全く待ってなんかいないですから気にしないでください!」
僕は正面で向き合い、狼憐先輩の顔を見上げる。
真っ直ぐ向いたら先輩の膨らんだ胸の方を見ちゃいそうな自分が怖いから!
「じゃあ、早速始めるとするか」
「はい!」
雑念を振り払いながら僕は狼憐先輩と練習へ入る。
狼憐Side
神兎の姿を見た瞬間、今日がいい日になると確信した。
彼の華奢な手足、素肌が見えて俺は激しく触りたい衝動に駆られていく。
本当なら今すぐ、そうしたいが神兎は練習したいと信じて此処に来ている事だろう。
俺は先程、彼がリフティングする姿を思い返す。
ボール技術が優れていて、相当なコントロールで操りミス無く続けていた。
あれは声を掛けなければ一体何処まで回数を重ねられたのか。
「相当リフティングが上手いみたいだな」
「そうですね。これとFKは1人でも出来ましたから、結構やってたと思います」
そう言う神兎の顔は少し曇っているように見えて、その先を俺は尋ねなかった。
彼にとって多分辛いであろう過去を無理に聞き出す必要は無いだろ。
「──補欠にすらなれないから、練習とか入れなくて居残りでよくやってたんですよね。リフティングやFKも」
神兎は自分から過去について明かす。
「神兎。辛くて嫌なら無理に話す必要は──」
「気にしてないから大丈夫です」
俺は止めようとするが、首を横に振って神兎は大丈夫と言ってるのか微笑んでみせた。
どうしようもなく可愛い、本当に可愛い、問答無用で可愛い、少し悲しい感じを見せる所また違う可愛さがあった。
彼の短めなサラッとした綺麗な青髪が、それを際立たせてくれる。
「見ての通り一般の男子より背が低くて細いから、すぐに当たり負けしちゃって……小学生じゃ大きな差は無かったけど中学では……」
確かに華奢で彼の半袖や短パンから見える生腕や生足がたまらない。
っと、神兎が悩んでいる時に駄目だろ。
真面目な事を言えば、今の現代サッカーは小柄な日本人も大型化が進んでいて高校男子世代で180台は勿論、190台も出て来る時代だ。
そこの競争で小柄な彼は弾かれてしまったんだな……。
「努力は実ってると思うぞ。FK、あれはキックに自信のある阿佐護姉妹も無理だろう」
「そう言われると、嬉しいです。沢山あれは練習しましたから」
彼の高い技術のキックは孤独による物だったか……。
「おかげで俺達にとって良い手本になっている。マネージャーであってコーチでもあるな神兎は」
「そんな、僕みたいなのがコーチなんて……」
ほんのり照れて赤くなった彼は照れているんだろうな。
可愛過ぎるだろ!襲ってほしいのか?
此処が誰にも邪魔されない2人きりのベッドの上だったら、お前は確実に押し倒されてるぞ神兎。
俺も此処が公園じゃなかったら理性を失ったかもしれない。
それだけの我を失わせる程の魅力が神兎には備わっている。
「なぁ、ボールコントロールが良いならドリブルとかの技術も上手いんじゃないか?」
「ドリブルはコーン相手にやってるぐらいで実際のプレーヤーに対してだと、どうなるのか……分かんないです」
彼は人知れず努力を重ねて続けてきた。
こんな彼が下手な訳ないだろう。
「なら神兎、試しに俺と1on1をやってみるか?」
彼がコーンとしかドリブル練習をしていないなら、俺が神兎の相手を申し出る。
分からないなら実際にやってみるのが一番だろう。




