カラオケで交流
「練習試合で円帝に勝ったし、最近練習続いてたから週末遊ばない!?」
僕が家でスマホを開いた時、女子サッカー部のグルチャに守華先輩発信でメッセージが表示される。
これを見た時、複数の部員が行きたいと多数が賛成と素早い返信をしていた。
インターハイの公式戦まで、そんなに時間の余裕は無いけど練習漬けでリラックスが全く無くて、オーバートレーニングで身体を狂わせたり壊すのも良くない。
「たまには遊んだ方がいいよね──」
僕がそう考えてるとキャプテンを努める咲月先輩は、可愛いアイコン付きで遊ぶのOKと返事。
部を纏めるキャプテンが言うなら息抜きも入れてった方が良いか。
男子である僕の考えより、女子同士だし考えに委ねる方が良いと思う。
僕は僕で彼女達が休んでる間に、マネージャーとして出来る事をしよう。
☆
──そのはずだったけど、休みの日。
僕は彼女達とカラオケに来ていた。
「(家で色々勉強するつもりだったのに、何でこうなったの!?)」
流れで連れてこられた僕は頭の中で今一度、此処に来るまでの事を思い出す。
あのグルチャで遊ぶ約束をしてから、狼憐先輩が「マネージャーも一緒の方が色々知れて団結力も高まるんじゃないか?」とメッセージが来たんだ。
それに皆も反対する事なく、僕も集まる事が決まる。
女子の集まりに男子が参加して大丈夫なのかと思ったけど、そういうのを気にしてるのは僕だけっぽいのかも。
「皆ー、飲み物は持ってるー?」
咲月先輩が自分の持つアップルジュースを手に持って、皆が飲み物を持ってるか確認する。
飲み物は皆ドリンクバーへ行って好きな物をコップに注いで持って来た。
ちなみに僕はオレンジジュースで、それから5人(守華、可憐、莉音、花音、月夜)が次々と同じ物を注いで持っていく。
「えー、では……この間の円帝戦は本当にお疲れ様でした。私達も女王相手にやれる事が分かったので、此処からは公式戦をで勝つ事を目指して行きましょう! 乾杯ー!」
乾杯の音頭を咲月先輩がとって、一斉にグラスを掲げた後に皆が飲む。
僕もオレンジジュースを飲んで柑橘の甘さを味わっていた。
「じゃあカラオケだし、歌っちゃうー?」
「何歌おうかなぁ」
「軽く何か食べたりもしようよー」
部員達それぞれがカラオケで何を歌おうか曲を検索したり、軽食のメニューを開いたりするのが見える。
考えてみれば僕はこういう場所に来た事はお父さんやお母さんといった、家族や親戚や仲の良い男友達と稀にしか無い。
周囲が女子だけで男子が僕だけのカラオケは初めてだ。
今の女子は何を歌うんだろうと、聞いてみれば明るい感じの曲が多くてアニソンも含まれている。
皆楽しそうだなぁと見ていたら──。
「ねぇねぇ、神兎君は何を歌うのー?」
「え……!?」
僕は守華先輩からカラオケで何を歌うのか問われた時、ギクッとなってしまう。
ぶっちゃけ言うと僕は人前で歌うのが恥ずかしくて、こういう集まりの時は聞き専に回っていた。
そうすれば自分が歌わなくて済むと思って。
「いや、あの……僕は」
「1人で歌うのが恥ずかしいなら、あたしと2人で歌おうよ♪もう曲は予約しちゃったし!
守華先輩は何時の間にか2人で歌う曲を入れていたらしく、今歌ってる女子が終わると、その歌は流れて来る。
歌うの僕!?
守華先輩はマイクを2つ持って1つは僕に渡した。
逃げ場は無し……!
「(大丈夫かな、下手とか音痴とか思われて楽しい雰囲気壊れたらどうしよう!?)」
自分の歌で場の空気が台無しにならないか、心配になりながらも僕は守華先輩から持たされたマイクを持つと、その守華先輩は僕の隣へ腰掛けていた。
「あ、あの。何でわざわざ僕の隣に……?」
「えー、デュエットだしラブソングでもあるから隣に居た方が気持ち上がって歌えるじゃん〜♪」
ラブソングのデュエットを歌った事が無いから、そういうものなのかどうかは分からない。
とにかく僕は流れのままに歌うのみだ。
ちゃんと歌う事を意識して、画面に表示される歌詞を見ながら僕は歌う。
☆
莉音Side
ちょっとちょっと!あんた絶対に歌いたいのが目当てで遊びに行こうとかなったんじゃないよね!?
神兎君にああしたい、こうしたいって仲良くする為に企画したの確定じゃん!
つか離れろっつーの!!
花音Side
ざけんじゃないわよ!あんた近すぎでしょうが!
神兎君にデカおっぱい押しつけて色仕掛けやるつもりでしょ!?
あのアメリカ女マジ憎たらしい〜!!
月夜Side
大花守華……滅滅滅滅滅滅……!!
狼憐Side
守華、お前絶対狙ったな?確信犯だろう!?
獣のように獰猛な笑みを見せた顔を俺は見逃さなかったからな!
よりによって神兎とデュエット、そしてラブソングとは……!
待て、お前さり気なく神兎の肩に手を回してるぞ!彼が振り払えないのを良い事に好き放題してるだろ!?
そっちがそう来るなら、俺だって──!
神兎Side
どうにか(僕にとっては)試練のカラオケを乗り越えて店の外へと出て来た。
守華先輩に密着されて結構ドキドキしたけど……柔らかい感触とか感じた気がしたし……!
一旦深呼吸して落ち着こうか……。
皆がカラオケを存分に楽しみ、時間も来たので今日は解散して僕も家に戻る。
大勢の女子とカラオケなんて女子サッカー部に入らなかったら、まず縁なんてなかったと思うし、特に守華先輩とデュエットした時とか良い匂いが最後までしてた──。
「馬鹿、変態じゃないんだから駄目だって……!」
また何かやらしい気持ちになって顔が熱くなってしまう。
あの人は息抜きにカラオケをしたかったんだし、そんな時に何考えてんだ僕は!
自分を落ち着かせようと深呼吸していた時、ズボンのポケットに入れていたスマホの振動が伝わる。
そこには狼憐先輩から僕へのメッセージが送られていた。
「明日、公園で個人練習に付き合ってくれないか?」
個人練習の誘い、というと僕を相手に1on1とか練習相手になってほしいって事かな?
この誘いに僕は勿論「僕で良ければ良いですよ」と返事を返し、狼憐先輩と次の日に公園で会う約束を交わす。




