練習試合 恋風VS円帝4
後半戦のフィールドに選手達が集まって、円帝のフィールドには芹華さんが立っている。
背番号10の白と黒のユニフォームを纏い、キャプテンマークを着けてピッチに立つ姿はガラリと印象が変わる。
戦いへ向かう誇り高き、凛々しい女騎士みたいだ。
後半のキックオフは円帝から始まり、いきなり芹華さんのプレーが来る確率は高い。
ピィ────
後半開始のキックオフが鳴り響くと共に、立ち上がりからワンタッチでボールを回す円帝。
やっぱり速いし、あれは中々取れないよ。
そして芹華さんにボールが渡り、トラップのタッチや動作で上手いという事が充分伝わってくる。
「天才かぁ……凄いなぁ」
そんな事を言われた事なんて全く無いので、同じサッカープレーヤーとしては羨ましい。
芹華さんに咲月先輩が早速向かうけど、まるでボールと優雅に踊るように躱されてしまう。
「マーク見失わないー!」
守華先輩のコーチングによる声がベンチから聞こえていた。
こういう状況で慌てずマークを見失わない事は守備として大事、とコーチから教わっている。
ただ芹華さんは迫って来て、あっという間に恋風ゴール前まで来てしまう。
どっちだ?パスか?シュートか?
芹華さんは右足を振り上げていくと、そこに月夜先輩がブロックに入る。
あれは良いタイミングのブロックだと思う。
「!?」
ただ芹華先輩はそれより上手で、蹴ると見せかけて右足で軽く左に転がし、左に持ち替えて今度こそ芹華先輩は左足でシュートに行く。
月夜先輩を巧みなキックフェイントで騙し、恋風ゴールへボールが飛んでいく。
「せぇぇ!!」
このシュートを守華先輩は声を出すと共に右腕でボールを弾き出していた。
これは守華先輩のスーパーセーブだ!
「守華先輩ナイスセービングー!!」
僕がベンチから声を出すと、守華先輩が僕に笑顔を向けている。
東京女王のシュートを止めたのを見たせいか、周囲からは「うおお!?」と驚くような声が聞こえた。
正直、僕もそう叫びたいぐらいにテンションが上がってしまう。
ただ、ゴールラインを割って相手のCKでセットプレーを迎えてるから、まだ気が抜けない。
「此処、気を抜かず守り抜くぞ!」
すると狼憐先輩が恋風ゴールまで戻り、守備につく姿が見えた。
長身の選手が加わってくれれば、高いボールを跳ね返す確率は上がる。
円帝のキッカーは芹華さんが努めるみたいで、険しそうな顔を浮かべたまま腕を組む。
本気でゴールを狙ってきそうだから気をつけないと。
守華Side
ふ〜、結構良いシュートが飛んで来たなぁ。
そこは流石、東京女王のキャプテンなだけあって凄いのをかましてくるじゃん!
だからってゴールは許さないけどね?
というか、あたしに向かって神兎君が声を掛けて笑顔を向けてくれたの最高過ぎない!?
試合中じゃなかったら……うん、絶対に行く所まで行ってる。
まぁ試合後、ひょっとしたらじっくりイチャイチャ、ありそうだよねぇー♪
とりあえず忌々しい女騎士な司令塔にはドヤ顔をやっといた。
あんたが入り込む隙間なんてないから!
っと、それよりセットプレー守らないとね。
向こうも長身の選手は結構居るけど、うちの方も負けていない。
狼憐先輩も戻ったりと、高さ対策は出来ている。
とかなっても東京女王と言われる程のプレーヤーが、素直に放り込んで来るとは考え難い。
すると手前のニアサイドに放り込み、そこに円帝の選手が走り込んでいた。
シュートが来ると、あたしが身構えた時──。
「っ!?」
突然ぬっ、て感じで現れた月夜先輩がボールを蹴り出してクリアする。
これは根暗先輩のナイスプレーだった。
その後に神兎君から「月夜先輩ナイスクリア!」と声援を受けるのは悔しいけど!
燐火Side
芹華のシュートやセットプレーを立て続けに止めてきた恋風に、あたしは正直驚かされてしまう。
いけ好かねぇ女ではあるけど、芹華のサッカーの実力はガチで凄くて1on1では何度もやられてきた。
天才プレーヤーと言われる奴を東京の雑魚共が止めてるなんて信じられない。
何なんだ、こいつらは!?
円帝のスローインでボールが投げられ、再び芹華に繋げようとするけど向こうの10番に読まれてパスが弾かれる。
馬鹿、依存し過ぎだろうが!
それを向こうの7番が取って似たような8番と、上手いワンツーで円帝の包囲網を掻い潜って来た。
どっかのボールはダチっていうコンビの女子バージョンかよ!
「もっと寄せろ! 早く!」
味方が少しもたついてるのを見て、あたしは檄を飛ばす。
コーチングしながら恋風の銀髪デカ女をマークするのも忘れない。
雑魚共にカウンターでゴールされてたまるか!
狼憐Side
守華のスーパーセーブで神兎からの声をもらい、悔しいと思った。
しかし俺は此処までFWとしての活躍を見せられず、目の前のガラが悪そうなデカ女が付き纏って来る。
1度は守備へ戻ったりしたが、月夜が低いクロスに何時の間にか忍び寄って弾き返したりと、あの女も神兎から言われていた。
なら、俺は勝利に繋げるゴールを決めるしかない。
FWは得点を決めてこそだからな。
中盤で咲月が良い読みをして、パスを止めると阿佐護姉妹の2人が抜群の連係で円帝の守備を突破。
これは来ると俺はFWとしての勘が伝わって円帝ゴールへ走る。
側には忌々しい金髪デカ女が俺をマーク。
そう何時までも抑えられてたまるか。
すると花音からパスが出て、その瞬間に俺は全速力で相手ゴールへ駆け出す。
花音が蹴ったボールは俺の前に転がるスルーパスとなり、俺は相手より早くボールを取る。
「クソがぁ!!」
そこに左から強い衝撃が走り、あの金髪デカ女が俺の左から肩同士をぶつけてきた。
「っ!」
思ったよりも強い力が伝わるも、俺は踏み止まって耐える。
当たってきたのが左からでラッキーだったな……。
おかげで自信ある右足でシュートが出来る!
俺は相手のゴールとGKを見据えて、右足を素早く振り抜いた。
良い感触が伝わると共にボールはGKの左側を抜き、円帝ゴールがシュートによって大きく揺れ動く。
確かな手応えと共に俺は右腕を突き上げてゴールの余韻に浸る。




