練習試合 恋風VS円帝3
「0ー0……だと……!?」
「相手はあの円帝のはずだろ……?」
「あの廃部寸前だった女子サッカー部が何で此処まで粘れんだよ……!?」
試合前の何点差付けられて負ける予想と全然違うから、試合を観戦してる皆がザワザワと騒ぐのが僕の耳に届く。
結構前半は押されたけど前半終了の笛が鳴った時、スコアは0ー0のままで得点は動いていない。
相手が2軍とはいえ東京女王を0に抑えるのは凄い事だ。
GKの守華先輩が枠内のシュートを全て止めてくれたり、月夜先輩が危ない所を未然に防いでくれたのが大きい。
それに中盤で阿佐護姉妹の先輩2人や咲月先輩も攻守で積極的に動いていたから、向こうに思ったより攻めさせなかったのもある。
狼憐先輩もFWだけど守備で動く事が結構あったから、皆が良い動きで円帝の攻撃を封じられた。
このチームやっぱり凄いんだなぁ……!
「皆さん凄いです! 東京で1番強いチームを相手に0点で終えるなんて!」
「いやー、まぁねぇ♪」
「「それ程でもー♪」」
「まだ前半そうなっただけで気は抜けないが、ひとまず0で凌げた事は大きいな」
「……恋風……凄い……」
皆がタオルで汗を拭いたり水分補給を取りながら、誇らしそうな顔を見せている。
後半どうなるか分からないけど、このまま反撃で1点取れれば良いな。
「あれ?」
「え、嘘……」
その時、選手達が円帝のベンチに注目しているのが見えた。
何だろうと見てみれば、守神芹華さんが背番号10のユニフォーム姿になっている。
キャプテンマークも右腕に巻いて試合に出る準備を進めていく。
「え、ええ? 2軍だけかと思ったら守神さん出て来るの!?」
芹華さんが出場する姿を見た咲月先輩が驚くように、僕も驚いていた。
円帝女子サッカー部のキャプテンで高校No.1のテクニックを持つと言われる天才。
更に学校の成績もトップクラスで守神叶さんは元々、お金持ちな家の人で元女子サッカーのプロ選手。
女子日本代表にも選ばれた事のある凄い人で、その血を芹華さんが受け継いでいる。
監督のお母さんも滅茶苦茶凄いんだなぁ……女子サッカーの凄い人って言えばマネージャーやるまでは、緑山薫さんが女子の凄い人ってイメージだったけど。
「あの人のスルーパスとかドリンクとか、動画やテレビで見て滅茶苦茶参考にしてたけど……まさか一緒にサッカーする時が来るなんて〜」
何か咲月先輩嬉しそうだなぁ……。
同じ中盤の選手だし、色々参考にしてる憧れの選手っぽいね。
憧れの選手とサッカーするってなったら、滅茶苦茶嬉しいってなるから気持ちは分かるけどね。
僕ならグレイス・スレイダーやサルバトーレ・ディーンとか、多分一生縁は無さそう。
「憧れてるって事はさ、どうすれば止められるかっていうのも知ってるんじゃない? いっぱい見てきてるみたいだし」
「え? 止められるかは分かんないけど、まぁプレーなら沢山見てきたから……」
守華先輩の言うように、この中で芹華さんを1番見て研究してきてるのは咲月先輩みたいだから、マークする役目は最も適していると思う。
勿論フォロー出来る人は咲月先輩のフォローに回るようにしないといけない。
芹華さんに注意が行き過ぎて他がフリーになると崩されてしまう。
「相手は天才、そこはサッカー馬鹿の意地を見せようー!」
「咲月、サッカー馬鹿として頑張れー!」
「めっちゃ馬鹿馬鹿言うじゃん!?」
双子の莉音先輩、花音先輩に軽くイジられながらもエールを受けて、チームからは笑い声が聞こえる。
僕も後半、しっかり声を出して応援しよう。ファイト恋風女子サッカー部!
「(あの女騎士っぽいの、試合前に神兎君へ挨拶に行ってたよねぇ〜? ぜぇ〜ったい良い格好なんかさせないから!)」
「(何で東京女王まで言い寄ってるわけ!? 神兎君を何か誘惑しそうな感じしたし!)」
「(あんなん許せないっての! マジであの女共々ぶっ倒してやるんだから!)」
「(いくら強くて凄かろうが、やって良い事と悪い事があるのを教えてやらないとな……!)」
「(……絶対……潰す……擦り切れるまで潰す……)」
5人の女子からは禍々しいオーラが発生していた。
試合前、神兎に近づいて親しそうに話す芹華への強い嫉妬からの物で、彼女達は絶対に神兎の事を渡さんと強い気持ちで後半戦に臨む。




